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世界のモノの90%以上を運ぶ船舶輸送。環境に配慮したファイナンスで支えていく

新生銀行は、海運業界の気候変動リスクに対する金融機関の取り組みである「ポセイドン原則」に署名し、日本、世界の物流を支える船舶輸送における脱炭素化の取り組みをファイナンスの面からサポートしています。その意義や可能性について船舶ファイナンスを手がける担当者に聞きました。

語るひと:
新生銀行 スペシャルティファイナンス部
船舶・航空機ファイナンス担当 
統轄次長 髙橋伸壮
部長代理 大塚嵩典

日本、世界の貿易を支える船舶輸送
縁の下の力持ちの実態とは

「日本の貿易物資のほぼすべて、99.6%が船で輸送されている(※1)ってご存じですか?」
そう問いかけたのは、スペシャルティファイナンス部で船舶ファイナンスを手がける大塚さん。新生銀行に入社する前は船会社でキャリアを重ねてきており、上海や香港などに駐在して海運を支えてきました。


大塚:船は航空機に比べると速度こそゆっくりですが、大量に、そして安く運ぶことができます。エネルギーや食料品、自動車などさまざまなものが輸送されていますが、日本は主な資源を海外に依存しています。鉄鉱石や石炭、原油は100%、天然ガスは98%。綿花100%、大豆が94%、木材も67%といったように、日本経済を支えるエネルギーや物資は、ほぼ船によって海外から運ばれてくるのです。それは世界の貿易を見ても同じです。エネルギー資源や食料をはじめとする世界貿易量の約90%は船が輸送しているのです。船による海運は物流を通じて世界中の経済活動を支えていますが、特に私たちの暮らしには重要な存在なのです。

環境負荷低減のためガス燃料も利用可能なデュアルフューエルエンジンを搭載した液化ガス輸送船(France LNG Shipping S.A.S)

髙橋:海運は世界経済にとって欠かせない産業ですが、グローバル化が進むにつれて海上輸送量、そして船舶の数は右肩上がり。各国を結ぶ海上物流ルートも大洋に広く張り巡らされており、海運業界は成長産業として存在感を発揮しています。こうした国内外の海運業界の動向を常に確認しながら、新生銀行は船会社と関係を深め、船舶の購入に関する資金提供といったファイナンス実績を重ねています。

船舶ファイナンスの重要性について語る髙橋さん

環境に配慮した物流が世界のトレンドに。
金融機関ができることを考えていく

髙橋:他の産業と同様に、船舶輸送でも環境への目配りが求められるようになり、世界のメガトレンドとして、脱炭素化を巡る動きが活発になっています。航空機、自動車といった他の輸送と比較すると、船舶輸送はエコな輸送手段と見られてきました。しかし、その輸送量は圧倒的です。その結果、国際海運全体のCO2の排出量はドイツ1国分のCO2排出量に匹敵するほど(※2)。そこで、世界の海上輸送全体で、CO2をはじめとするGHG(温室効果ガス)を削減しようとする動きが活発になっています。その枠組みづくりを先導するのは、国際海事機関(IMO)。船舶の安全および船舶からの海洋汚染の防止等、海事問題に関する国際協力を促進するための国連の専門機関です。

IMOは、2050年までに2008年対比でGHGの排出量を50%削減するという数値目標を設定しています。2050年までの数値目標をいかに達成するか、海運業界全体にとってのこの大きなゴールに向けて、金融機関もファイナンス面から達成を支援する取り組みを始めています。
こうした海運業界のグローバルな潮流を踏まえ、新生銀行は2021年3月にポセイドン原則に署名しました。参画を検討してから、約1年に亘るヒアリング、調整期間を経て、邦銀として3行目の署名になりました。

「ポセイドン原則」とは    
IMOが策定したGHG排出量削減目標を受け、海運業界の脱炭素化をファイナンス面からサポートすることを目的に、民間金融機関による自主的な取り組みとして、2019年6月に欧米の主要金融機関により設立されました。ポセイドン原則に参画する金融機関は、ファイナンス対象船舶の毎年のCO2排出量を集計し、各船舶及び船舶ファイナンスポートフォリオ全体のCO2排出量削減目標に対する貢献度を算出のうえ公表します。2022年4月現在、世界で27の金融機関が署名しており、これは全世界の船舶ファイナンス残高の半数に達する規模です。2021年3月に署名した新生銀行をはじめ、日本では6行の金融機関が署名しています。

ポセイドン原則の公式ロゴ

大塚:(新生銀行のポセイドン原則への署名をうけて)お客さまの中からは『融資基準が厳しくなるのではないか』という不安の声も挙がりましたが、私たちも船舶のGHG排出量の数字だけを追っていくわけではありません。船舶ファイナンスの中長期的な目線に立ち、環境に配慮した船舶輸送への移行に向け、丁寧に説明をしながら理解を得ていきます。銀行と船会社が足並みを揃え、目標に向けて一緒に考えていければ。共によりよい未来をつくるための絶好の機会として、ポセイドン原則を捉えていきたいですね。

「ポセイドン原則を足並みを揃えるきっかけにしたい」と語る大塚さん

脱炭素化に向けて一丸となる海運業界
関わる者の情熱を乗せ、持続的な未来に漕ぎ出す

髙橋:新生銀行グループは、「事業を通じたサステナビリティの実現」を経営の基本戦略に据えています。ポセイドン原則の署名も、お客さまの事業をサステナブルなものに移行し、変革するための重要な施策だと考えています。船舶ファイナンスに携わる金融機関として、海運業界の脱炭素化をファイナンスの面から支えていくこと、その先には気候変動リスクへの積極的な対応があります。

大塚:ポセイドン原則に参画する金融機関は、ファイナンスの対象となる船舶の年間CO2排出量を集計し、削減目標に対する貢献度を算出して公表することが求められます。対象となる船の一隻ごとにデータを出すわけですが、あくまで新生銀行の船舶ファイナンスのポートフォリオを見て、俯瞰的に捉えていければと思います。算出した数字は海運業界全体を脱炭素化というゴールに近づけていくための材料です。私たちは金融機関としてどんな働きかけができるのか、どんな支援ができるのか。まだ手探りしている段階ですが、お客さまと対話を深めつつ、ゴールに向けた道筋を見つけていきたいですね。

髙橋:重視するのは、船会社をはじめとする関係者との密なコミュニケーションです。海運業界は造船所や船主、船舶運航オペレーター、金融機関や損害保険会社、港湾・ターミナル・倉庫関係者、商社や船員の教育機関など、さまざまな産業・機関が密接に関わっています。これは「海事クラスター」と呼ばれ、業界が一丸となって課題解決に取り組む姿があります。

大塚:海事クラスターは、各プレイヤーが一緒になって課題を解決していこうという気運に満ちています。情報交換を進める中、どんな壁も乗り越えていこうという思いをひしひしと感じます。船舶ファイナンスのニーズも多様化する中、海運業界を支えていく。その先に、環境への貢献も視野に入るでしょう。

髙橋:アンモニアや水素といった次世代エネルギーの活用、または風力推進船など、GHGを削減するためにさまざまな取り組みが進んでいます。日本の海事クラスターから、どんなイノベーションが生まれるでしょうか。船舶ファイナンスに限らず、金融機関として未来に向けた取り組みも注視していければと思います。


海事クラスターの一角として、金融機関の立場から海運業界、そして環境問題を見つめるふたり。新生銀行はサステナビリティを基軸に、未来の船舶ファイナンスを考えていきます。

※1 出典:公益財団法人日本海事広報協会「日本の海運SHIPPING NOW2021-2022」
※2 出典:一般社団法人日本船主協会「日本の海運 2050年GHGネットゼロへの挑戦」

【編集後記】
船舶・航空機ファイナンス担当として運輸業界を俯瞰して解説する髙橋さん。海運会社から金融機関に転じたこともあり、船や海運への想いを語ってくれた大塚さん。「海運業界の人は、意外にウェットなんです(笑)」と口を揃えました。その言葉通り、随所に熱いパッションを感じた取材になりました。
               
取材・文/佐々木正孝 撮影/辰根東醐

こちらは、新生銀行グループの新生銀行に関する記事です。

新生銀行の「船舶ファイナンス」について、もっと詳しく知りたい方はこちら!👇(新生銀行グループのサイトへ遷移します。)

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