「国際金融室」が感じる、世界のサステナブルファイナンス事情とは?
持続可能な社会を実現するためにプロジェクトや企業への投融資を行う「サステナブルファイナンス」は、世界的に増加しており、SBI新生銀行グループでも、国内だけでなく、海外のサステナブルファイナンスにも取り組んでいます。
コロナ禍で中止されていた海外出張も再開され、海外の事業法人や金融機関のお客さまとの窓口として活躍の幅を広げるSBI新生銀行国際金融室の2人に、国際金融室の役割と海外のサステナブルファイナンス事情を聞きました。
国際金融室は、SBI新生銀行における「海外との窓口」
──SBI新生銀行の国際金融室の仕事は、あまり対外的に可視化されていない印象です。国際金融室は何名くらいで、どんな仕事をしているところなのか、まずは概要を教えてください。
葉室:国際金融室は、法人営業を担当する部署の内室で、室名のとおりグローバルな仕事をしていますが、実は小さなチームなのです(笑)。室長、統轄次長の私、海外の金融機関担当2人、海外の事業法人担当2人、バックヤードで事務を担当してくれている方が3人で、合計9人ですね。海外事業法人を担当している1人が藤本さんです。
藤本:国際金融室のメンバー は、20代前半から60代前半まで年齢層が幅広いのが特徴ですね。男女比率も半々で、とてもバランスがとれている印象です。
葉室:国際金融室の役割を一言で言うと、「SBI新生銀行の、海外法人のお客さまとの最初の窓口」です。SBI新生銀行は、現状海外の支店を持っていないものの、海外の事業法人や金融機関からのお問い合わせ、ご相談はとても多くあります。
そこで、私たちが電話やメールでリレーションを築いたり、直接現地にお伺いしてコミュニケーションをとったりしています。
海外に拠点や支店を持つ日本国内の法人については国内向けの営業担当者が担当しますから、国際金融室がやりとりするのは非日系の海外事業法人や海外金融法人のお客さまです。非日系のお客さまが自国以外、つまり海外で資金調達をする際に、資金の出し手として関わりを持つのが国際金融室の主要な業務です。現在はアジア、オセアニアを中心に、幅広いお客さまと投融資の取り引きがあります。
――そうしたお客さまへの融資案件は、どのようにアレンジするのですか?
藤本:海外で資金調達するような企業は規模も大きく、したがって1回あたりの調達金額額も数百億円~数千億円と大きいため、単一の銀行ではなく、複数の銀行がシンジケート団を組んで融資する「シンジケートローン」が中心です。その中に、アレンジャー(幹事金融機関)あるいはレンダー(参加金融機関)などさまざまな立場で当行も参加しています。
ほかの金融機関などから情報をキャッチし、限られた期間の中で全体を調整しながら要件を組み立てていかなければならないところに難しさがあります。
近年では、こうした要件のひとつとしてサステナビリティの観点からの確認も行っており、例えば、インドのエネルギー会社向けローンに参加した際には、同社のカーボンニュートラル達成に向けたロードマップや社内体制の確認に加え、実際にサステナビリティ関連の取組状況等について借入人の役員層との対話による確認ができるかどうか?といった点についても審査部から確認を求められました。当行では与信先のセクターに応じて、こうしたESG戦略の確認や顧客へのエンゲージメントの確認を行うことがあります。
海外出張が動き出し、攻めの営業ができるようになった
――お客さまとの打ち合わせのために、海外出張は多いのですか?
葉室:コロナ前は定期的にお客さまのもとに訪問をしていましたが、コロナ禍ではまったくお客さまに会いに行くことができず…。私たちも行けない、先方からも来ることができない状況が長く続く中、電話やメールでコミュニケーションを深めましたが、どうしても受け身の営業になってしまう部分はありました。
今年(2023年)の春、コロナがようやく明けて、すぐに私たち2人でシンガポールに行き、金融機関や融資を希望する事業法人を直接訪問することができました。
藤本:対面で話すと、「話の進み方がこんなに違うんだ」と実感しましたね。その場で現地の銀行から新規案件のお話をいただいたり、現地の地銀さんを含めていっしょにローンを考えようという話が出てきたり…。具体性のある話が飛び出し、いろいろな案件が前向きに動き始めました。
国は違っても、ビジネスを進める上ではお互いの信頼関係が重要で、ある意味「相手に刺されば、話はどんどん進む」ということを、あらためて感じました。
――海外に対する営業は、国内といろいろ違う面がありそうですね。
葉室:国内では、SBI新生銀行といえば、ありがたいことに一定の知名度がありますが、海外では「あなた、誰?」という感触なのが、一番の違いです。
海外のお客さまに対しては、まずSBIグループがどのようなグループで、何をやっているのか、その中でSBI新生銀行はどのような立ち位置なのか、その法人に対して何ができるのかをしっかりと説明して、興味を持ってもらうところから始めます。お客さまに合わせて出す情報を変えたり、情報の出し方を考えたりと工夫をしています。
藤本:営業としては、案件ベースのコミュニケーションだけではなく、今後の取り引き展開を想像しながら関係者やアレンジャーとの長期的なリレーションを目標としています。
グローバル企業で、サステナビリティを語らない企業はほとんどない
――海外事業法人のサステナブルファイナンスへの意識についてお聞きしたいです。
葉室:国によって意識に濃淡はありますが、グローバルな資金調達を検討する規模感のお客さまの場合、バンクミーティングの場などでもサステナビリティやESGを語らないお客さまは存在しません。サステナビリティへの意識が見えないと、グローバル投資家やグローバル金融機関からの資金が集まりにくい現状はあると思います。
――直近で行かれたシンガポールはいかがでしたか?
藤本:シンガポールは面積としては小さな国ですが、世界の金融機関や投資家はアジアの中ではシンガポールを拠点としていることが多く、明確に脱炭素の目標を掲げている法人が多いと感じました。
私たちが接点を持っている法人は、シンガポールのほかオーストラリア、インド、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾などのお客さま。その中でも、例えばオーストラリアでは明確に数値目標を出している法人が多いのに対し、発展途上国の法人はおおよその数値しか開示していないことが多いといった違いは感じます。国によって脱炭素を政策的にやっているかどうかの違いだと思います。中小企業の意識はまだこれからですが、大企業となるとESGやサステナビリティの目標や取り組みが、その国の政府の方針と合致していることが多いです。
海外とのつながりを、国内の地域金融機関にも還元していきたい
――海外のサステナビリティへの取り組みに触れる立場として、日本、そしてSBI新生銀行の取り組みと比べると、率直にどのように感じますか?
葉室:サステナビリティといってもさまざまな切り口がありますから、一言でいうのは難しいもの。シンガポールが比較的進んでいると先程言いましたが、働き方や女性活躍という面で当行の取り組みがグローバルでみても進んでいる感じはあります。
私自身、子育てをしながら働いていますが、出張時にお客さまに「子どもがまだ小さいから、午前は出社して午後は在宅で働いているんですよ」と伝えたら、うらやましがられました。
海外の金融機関とお話しする中でも、当行のサステナブルインパクト推進部では、当行グループが投融資する企業やプロジェクトに対するサステナビリティやインパクトを評価していたり、SBIグループ傘下にある新生企業投資では、「少子高齢化」「労働人口減少」といった社会的な課題にフォーカスしたインパクト投資を推進していたりするなど、興味深い取り組みをたくさんしていると感じます。
――最後に、今後の展望について聞かせてください。
藤本:コロナが明け、もっと現地でお客さまとコミュニケーションをとって関係性を構築していこうというフェーズにあり、室内は活性化しています。これからがおもしろいチームだといえますね。
コロナ前には、大きな案件をクローズすると、その案件に関わった金融機関が集まってクロージングパーティーを開くような機会もあったようです。今後機会があれば、そうした場にも参加して、つながりをどんどん広げていきたいですね。直接お客さまと良い関係性が構築でき、相対でのお取り引きも増えていくことを期待しています。
葉室:私もせっかく営業として異動したからには、私たちがシンジケーションを主導するような取り組みをはじめ、海外のお客さまからも直接ご相談をもっとしていただける関係を構築していきたいです。実際、対面でお話をさせていただく中で出てきた案件もあるので、そういった取り組みをしっかりやりきりたいです。
また、グループとして、地域金融機関とさまざまな資金ニーズに取り組むことは、新たな方針のひとつでもあります。
私たち国際金融室は、日本では知られていなくても、将来性のあるおもしろい海外企業とたくさん接点があります。今後は国際金融室として可能性のある海外企業と関係性を深め、その存在を、国内のお客さまに伝え、ビジネスチャンスを広げていけるような役割を果たせればと考えています。