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ランチタイムに生まれたインパクト投資ファンド~インパクト投資【Vol.1】

「インパクト投資」とは、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を目指す投資活動です。いまや世界のインパクト投資は80兆円規模の市場へと拡大し(※)、その存在感が急速に高まっています。そのインパクト投資によってよりよい社会を目指すのが「インパクト投資ファンド」。今回は、邦銀系初となるインパクト投資ファンドを生んだ2人の背景や思いを聞きました。

語るひと:
新生企業投資 インパクト投資チーム
マネージングディレクター 黄春梅
シニアディレクター    高塚清佳

インパクト投資が生まれるまでの道筋 
ライフイベントを通して共感が生まれた

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――「インパクト投資ファンド」を世に出したおふたりにご登場いただきました。どんな思いを持って投資に向き合ってきたのでしょうか。キャリアと合わせてお聞かせください。

黄:私は中国の出身です。大学院への留学で来日し、自動車会社でM&A部門に籍をおいたあと、新生銀行に入りました。投資部門が長く、未上場の株式投資にずっと携わってきていますが、ベンチャー投資では、起業家たちが人生をかけて熱い思いで取り組んでいる様子を目の当たりにしてきました。行動力、熱意を感じるところがすごく好きなんです。その会社の成長に伴走する点では子育てにも似ていると思いますし。私自身は、ベンチャー投資に携わりながら、『ドラえもん』のポケットを持っているような気持ちを感じてきました。起業家たちが困っていて、そのステージで求めているものがあったら、タイムリーに応援ができる。それが『ひみつ道具』を出す瞬間に似ています。

高塚:私は幼少時代を外国で育った、いわゆる帰国子女です。中南米、アメリカといろんな国で暮らして、中学・高校・大学は日本で学びました。大学卒業後は、スペイン語圏でもっと広い世界を見てみたい……そんな思いから、アルゼンチンの大学院へ進学しました。その学びと経験を経て、日本のアルゼンチン大使館に就職。多くの刺激的な仕事に恵まれましたが、そこで感じたのは、「自分はやっぱり、最後は人が好きなんだ」ということです。その後、新生銀行グループで金融のキャリアを始めた当初は経験のない領域での実務積み上げに必死でしたが、結局は一緒にやっている仲間に助けられ、あらためて人に恵まれたなと感じています。金融はあくまでもツールで、その先には多様な人がいて、出会いを重ねながら仕事をしてきました。インパクト投資も、そうなんです。ヒト、モノ、おカネを集めていくプロセスの中で、いろいろな人と対話を繰り返していきますが、その過程でいつの間にか仲間が増えていくのです。 


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――そして、投資を仕事にしていく中で黄さん、高塚さんが出会われた。共感し合ったのはどんなポイントだったのでしょうか?

高塚:リーマン・ショックの後、私はプライベートエクイティ部も兼務するようになったのですが、そこで出会ったのが黄さんでした。それからもう10年以上も机を並べていますね。彼女は、投資先で動きがあって投資家としてリアクションを求められた時に、時限ある中でも、なぜそれがイシューになっているかを根本から考えて対応するんです。その時の優先順位付けが私の価値観と合うなと思っていて、お互い「いつか何か一緒にやりたいよね」と無邪気に言い合ってきました。

そして時は流れ……お互いにライフイベントを重ね、仕事と子育ての両立の悩みをしみじみと共有するようになったんです。悩みと言っても、私たちが話し合ったのは「子育て=大変」ということではありません。子育てって合理的じゃないことがたくさんあるよね、と言ったらいいのでしょうか?

黄:そうですね。子どもと生活をしていると、不確実なことが少なくありません。たとえば、子どもが急に熱を出したとしましょう。困った、誰かに預かってもらおう。そうだ、ベビーシッター!と思っても、高いお金を払ったら私たち親子にフィットするベビーシッターに出会えるかと言うと、そうではありません。お金を払って、高品質なサービスを確実に受けたい。そう思っても、肝心のサービスがない。育児をしていて、そんな思いを抱くことが多かったんです。

高塚:そこで共感が生まれました。ちょうど、お昼休みにランチをとっているときでしたね。私たちが直面しているのは、社会の不合理なこと、不確実なことにたくさん出会うという子育てです。その中で、私たちに何かできることがあるんじゃないかな? ランチタイムの意気投合から、私たちは走り始めました。この頃は、まだインパクト投資というゴールは見えてはいなかったですね。

ランチタイムのひらめきを大切に 
始めるのは「今」しかない!

――ランチタイムから生まれたファンドですが、そこには「インパクト投資」という新たな価値観が加わります。どのようにアイデアをかたちにしていったのでしょうか。

黄:ランチタイムが、その時々の私たちのミーティング時間になりました。そこでビジネスプランを出し合って……いろんなアイデアが生まれましたね。その中には、私たち自身が事業を起こすか?という選択肢もありました。だけど、それでは不合理を解決するための策が限られてしまうし、起業っていうのもちょっと違う……そうだ、自分たちは投資家だった。投資家ならいろんな企業を応援できるじゃないですか。あらためて自分たちが何者であるかに立ち返って、頭の中でピン!とランプが点灯した瞬間でした。私たちメンバーに共通しているのは「Work in Life」というキーワード。そうだ、私たちは子育てサービスのユーザーでもあるし、投資家でもある。その気づきが、私たちを一歩先に進めてくれたのです。その週は……ちょっと高級なランチを食べましたね(笑)

高塚:私たちが考えている課題解決のためにはいろんな方法があり得ます。その中で、私たち新生銀行の投資銀行部門が評価された先進性独自性をもっと伸ばせる方法を模索すればいい……その延長線上に、ふたりで考える「新しい投資」のかたちが見えてきたのです。「いつか何か一緒にやりたいよね」と話し合ってきたふたりですが、その言葉は「いつかじゃなくて、やるなら“今”しかないよね!」に変わりました。

――おふたりの熱意と思いから、2017年1月に「子育て支援ファンド」が組成されました。結実、誕生した瞬間を振り返ってお聞かせください。

黄:私たちの上長に、子育てを応援する投資のアイデアを持っていきましたが、最初はもっと改善できるようにという、厳しい指摘ばかり。もちろん、新しいチャレンジをどんどん受け入れてくれる土壌がありますが、それは実践的でちゃんと商品になるものでなければ。指摘を受けては改善し、また持っていって……その繰り返しの中で、私と高塚さんは「もっといいアイデアにしよう」と、いろいろな人にヒアリングも重ねていきました。金融の世界の人ばかりではありません。育児用品の総合メーカーだったり、育児から教育まで手がける大企業だったり、病児保育事業の運営者などなど……多くのヒアリングを重ね、イメージを固めていったのです。ちょうどその頃に、日本財団が運営する日本ベンチャー・フィランソロピー基金の報告会で「今、世界ではインパクト投資が活況を呈している」というトピックを聞きました。

高塚:ここでまた、黄さんの頭の中で、そして私にも「ピーン!」とランプが点灯しました(笑)。経済的なリターンと社会的なインパクトの両立を目指すインパクト投資は、投資家であるし、そしてユーザーでもあるというWork in Life、そのままの投資です。日本の銀行ではまだ誰もやっていない業界に前例がない。もちろん、そのアイデアをまとめる中で上長との協議も続きましたが、「これはダメ」「もう来るな」とは一度も言われませんでした。黄さんをはじめ、一緒に前に進む仲間もいましたし、私はやはり「人が好き」。そんな原体験をあらためて感じる機会にもなったのです。

子育て支援ファンド(日本インパクト投資1号投資事業有限責任組合)
2017年1月に設立されたファンド。保育や学童、教育、家庭支援のほか、育児と介護の両立支援などの事業や女性活躍支援など、子育て関連事業を営む企業を対象に投資を行う。第1号投資先はキッズスペース付きのオフィスを、直営19店舗を含む全国56拠点(2021年10月現在)にて運営するママスクエア。

はたらくFUND(日本インパクト投資2号投資事業有限責任組合)
邦銀系初のインパクト投資ファンドとして注目を集めた1号「子育て支援ファンド」の後継ファンド。「多様な働き方と生き方の創造」を目指し、「治療アプリ®」の開発・販売を行うキュアアップなど、子育て・介護・新しい働き方に関連する事業を行う企業に対して投資を行っています。

【出典】
※ GIIN ANNUAL IMPACT INVESTOR SURVEY 2020

「チームの多様性が投資のアイディアに~インパクト投資【Vol.2】」の記事はこちら📌


新生企業投資_日本語
この記事は、新生銀行グループの新生企業投資に関する記事です。

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