「チェックシート」の活用でサステナブルな付加価値を創造
SBI新生銀行グループのサステナビリティを推進する役員の一人に代表取締役社長の嶋田貴之が加わり、お客さまの経済課題だけでなく日常生活に潜む社会課題、環境課題の解決にも目を向け始めたアプラス。2022年1月には社内にサステナビリティ推進チームが作られ、SBI新生銀行グループの一員としてサステナビリティとの向き合い方を模索しています。
「サステナビリティチェックシート」は、アプラスが開発する商品について、サステナビリティの視点で整理するための基準となるシートです。社外へのサステナビリティについての発信のもとにもなるこのシートについて、異なるバックボーンと強みを活かしてリリースにこぎつけた3名に、取り組みの裏側を聞きました。
忖度なく意見を出し合い、フラットにものづくりができるメンバーをアサイン
――アプラスの与信戦略部は、どんな仕事をしている部署なのですか?
中村:与信戦略部の「与信」は、クレジットや車のローンといった代金の回収までに時間がかかる取引において、相手に与える信用のことです。与信戦略部では、融資や融資枠を判断するための基準を作り、その結果をモニタリングして基準を調整しています。
基準には不変な部分もありますが、成年年齢の引き下げや、在住外国人の増加といった社会の変化に応じて考え直さなければならない部分も多いのですよ。
――今回のプロジェクトに与信戦略部のメンバーがアサインされたのには、そうした仕事内容が関わっているのでしょうか?
中村:与信の基準を決める役割上、与信戦略部はアプラスの既存商品や既存事業を検討する商品委員会および新商品や新事業を検討する新事業商品委員会の事務局も担当しています。サステナビリティ推進チームでどのような取り組みができるかを模索していたとき、アプラスが世に出す商品をサステナビリティの視点で見ることが重要だとして分科会が作られ、与信戦略部のメンバーが着任したのです。
私には前任者の退職に伴って声がかかり、適任者を探してこちらのお二人に声をかけました。
大田:知りませんでした!通常業務で前任の方の仕事を引き継いでいたので、てっきりその流れかと…。
仲宗根:私もです。
中村:こうしたプロジェクトでは、上司と部下の関係性に忖度せず、フラットに意見を言い合える関係性が何より重要です。また、多角的に検討するために、それぞれ関わってきた領域や得意分野が違うことも大切だと考えました。普段の仕事ぶりの丁寧さ、はっきりと自己主張できる芯の強さを見込んでのアサインなのですよ。
SDGsのゴールとターゲットを学ぶところからシートづくりをスタート
――皆さんの取り組みの第1弾が「サステナビリティチェックシート」だったとお聞きしています。作成はどのように進めていったのですか?
中村:サステナビリティチェックシートは、SDGsとアプラスの事業内容を紐づけ、貢献度の度合いを整理するためのフレームワークです。
プロジェクトの初期段階では、SBI新生銀行のサステナブルファイナンスのフレームワークとそのチェックシートを、そのままアプラスに落とし込むアプローチをしていました。
ただ、銀行のサステナブルファイナンスの対象は法人で、私たちのように加盟店を挟んでお客さまがいるBtoBtoCのビジネスとはそもそもの建付けが違います。与信額も低額で、取引数は膨大ですから、銀行のチェックシートとは別のオリジナルのものを作る必要があると考えました。
大田:そこで、私たちが引き継いだ段階では、まずSDGsを知るための勉強からスタートしたのです。17のゴールと169のターゲットについて、独学ではありますが一通り学びました。
仲宗根:SDGsやLGBTQ+といった言葉を知ってはいても、自分事として考える機会は少ないですよね。じっくりゴールとターゲットに目を通したのはこのときが初めてです。ターゲットは細かいですが、17のゴールはわりと身近で納得感があり、全体の流れを理解するのに役立ちました。
大田:3人が自分なりの解釈を持てたところで、169のターゲットにアプラスが関係しそうなシーンを紐づけていく作業に移りました。
SDGs全体を把握した上で、まずはそれぞれの考えを出してみようと、同じシートに各々が書き込みました。3人とも書き込む項目もあれば、1人しか書き込まない項目もあって、アプローチの仕方もさまざまでしたね。
私はアプラスの既存商品をあてはめていったのですが、お二人はアプラスでの働き方について、またアプラス以外の会社を含めた金融サービス全体を見ていて、私にはない視点だったなと思いました。
中村:3人それぞれの世代やバックボーン、興味関心が違うからこその結果で、おもしろかったですね。正解があるものではもちろんないので、それぞれの考えをすり合わせる作業自体が、大きな気づきになりました。
――ここから、チェックシートに記載する項目を絞り込んでいったわけですね。
中村:ひとまず私がアプラスのチェックシート対象になるかどうかを検討し、理由を付記してシートを再共有しました。アプラスが開発するサービスとしての視点のほか、アプラスで働く人にとっての視点も忘れてはいけないポイントでした。
3人全員が書き込んでいる項目は無条件に「◯」。それぞれの意見が出た項目については、「アプラスがやるべきことかどうか」というより、現実的な視点で「◯」か「×」をつけています。「×」の項目についてはもう一度お二人の意見を聞き、「◯」に転換できるかどうかを話し合いました。
大田:
熱意を持って推した項目が削られるのはくやしいので、もう一度しっかり調べて検討し、プレゼンした結果、「◯」に昇格した項目もあります。反対に、みんなが◯を書き込んでいた項目が「×」に降格することも…。
一つひとつを丁寧に議論し、紆余曲折を経て、2023年4月にサステナビリティチェックシートをリリースすることができました。
チェックシートをアプラスの一人ひとりがサステナビリティにふれる機会に
――サステナビリティチェックシートに対して、社内の反応はいかがですか?
中村:まだ始まったばかりなので、シートでのチェックを経てリリースされた商品はまだ2件程ですが、起案部(新商品を企画した部)の判断と事務局の判断には差があるとすでに実感しています。
仲宗根:事務局内でも意見が割れることがありますしね。
大田:でも、別に意見を統一する必要はないと思うのです。私たち3人の中だけでもさまざまな視点があったように、一人ひとりの価値観や育ってきたバックボーンによって考えが違うのは当然のこと。商品を開発した人でも、商品を作ったプロセスによって考え方はいろいろかなと感じます。チェックシートをもとに、一人ひとりが考え、場合によっては議論して理解を深めていくことに意義があると思っています。
中村:そのとおりですね。商品開発者がチェックシートで見慣れない言葉に出会ったときに「わからない」で済まさずに、自分なりに調べて考えて書くだけでも、サステナビリティへの意識は高まっていくでしょう。一方で「該当しない」で終わらせる人が多い項目は、見直しが必要かもしれません。
今後はシートに対するフィードバックを溜めて、リリースから半年後くらいに振り返りをしてシートの内容を再検討する予定です。シートのブラッシュアップとともに、アプラスのサステナビリティに対する意識が高まっていくことを期待したいですね。