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金融・不動産のプロ「SBI新生アセットファイナンス」がグループにもたらす価値とは

2024年1月にSBI新生銀行グループに加わったSBI新生アセットファイナンス(以下SAF)は、個人向け投資用マンション融資と法人向け不動産融資の両軸で投資用不動産のファイナンス事業を担っています(※)。かつては「開発専有卸」と呼ばれる不動産開発業務も担っていたSAFは、環境視点を含めた専門知識を活かして物件を評価できる強みを持っています。
(※)法人向け不動産融資は実需用不動産の取扱いもあり
 
海外投資家の多くが建物の環境性能や管理における環境配慮を重視する中、日本でも「環境」が投資判断の軸になる未来はそう遠くありません。
 
2025年1月に旧社名ダイヤモンドアセットファイナンスからSBI新生アセットファイナンスへと商号を改め、名実ともにSBI新生銀行グループとなったSAFの存在は、サステナブルな不動産市場形成に向けた動きの中でグループにどのような価値をもたらすのでしょうか。
 
今回は、一級建築士として同社の不動産開発事業にも携わった知識の宝庫・本間弘機さん、21年の勤務でリース事業からファイナンス事業まで幅広くSAFで経験を積み、自社の一気通貫ビジネスの特長や優位性に精通する澁谷知之さんにお話を聞きました。

語るひと:
本間弘機
建築構造設計、ゼネコンでの現場施工管理・営業と並行して省エネ団体で長年活躍。豊富な経験と知見を求めるSAFに請われ、65歳から同社で不動産開発事業や不動産融資に従事。現在は融資案件に関する相談業務を中心に存在感を発揮している。

澁谷知之
2003年にSAFに入社。以来、ビジネス最前線でリース事業やファイナンス事業に携わってきた。現在は法人営業部東京融資課・個人営業部に属し、不動産融資を担当。

※部署・役職はインタビュー当時


開発で培ったノウハウを、ファイナンス事業に活かす

──あらためて、SBI新生アセットファイナンスの事業について教えてください。
 
澁谷:弊社は、投資用不動産に関するファイナンス事業を一気通貫で行っています。投資用不動産を開発したいデベロッパー向けに開発資金や建設資金、大規模造成資金の調達をサポートする法人向け不動産開発融資と、資産運用を目的として投資用ワンルームマンションを購入される個人投資家向けにオーナーローンを提供する個人向け投資用マンション融資、そのどちらにも対応するということですね。

入社以来、約20年のあいだ、リース事業やファイナンス事業に携わってきた澁谷さん

以前は用地を仕入・再開発して新たな不動産物件を生み出す不動産開発事業も手掛けていました。このため、開発予定地とその周辺地域の状況、開発にかかるコストと企画している事業の収益性とのバランス、工事費の妥当性といった要素を高い精度で評価できる点が強みです。 

また、構造設計や現場の施工管理に詳しく、当社の開発事業も牽引していた本間さんからも助言を受けています。 環境配慮型不動産の必要性に早くから注目し、開発事業におけるZEH、BELSへのチャレンジを牽引してきた本間さんならではの、環境配慮型不動産のスムーズな認証取得とリスク管理の知見も当社の強みのひとつといえるでしょう。 

※ZEHとはNet Zero Energy House の略で、住宅の年間のエネルギー消費量を正味(ネット)でゼロ以下にすることを目指した住宅のこと。
※BELSとは建築物エネルギー性能表示制度のこと。1~5つの星で評価される。

 ――本間さんのノウハウが生きた具体的な事例を教えてください。

 本間:環境認証は取得までの関連手続きに時間がかかり、後から仕様を変更すると費用がかさむことに注意が必要です。 

本間さんは一級建築士。長年積み重ねてきた知見を発揮し、社内勉強会も開催している

SAFで以前手掛けた不動産開発事業において、1~5つの星で評価されるBELS(建築物エネルギー性能表示制度)で5つ星を取得した台東区駒形1丁目プロジェクトでは、買い取った昭和初期の建物を解体すると同時に基本設計を開始し、この時点で省エネ仕様を確定して図面に織り込みました。 

私どもSAFの省エネグレードが標準仕様でもかなり高いこともあり、工事に着手してからは断熱材の厚みや設備機器のグレードアップ程度で基準をクリアし、1世帯あたりわずかな金額アップで収めることができた好例です。ポイントは、設計の初期段階で早めに方針を決定し、グリップしておいたこと。そうすると、後からコストが積み上がるリスクが低減できます。

住宅の断熱性能やエネルギー消費に関する勉強会を通して、社内に知見を広げていく

――本間さんの知識を社内で共有し、知見のある人を増やしていくことも大切ですよね。 

澁谷:本間さんは、断熱住宅の普及に努める活動を行う協会でも活動されていました。営業が持ち帰ってきた案件の評価やアドバイスの傍ら、社内勉強会を開催し、自身が蓄えてきた知識を伝えてくれています。 

――とても有意義ですね。社内勉強会はどのような内容なのですか。 

本間:断熱建築物の基礎的な評価についての知識を身につけてもらうことが目的で、さまざまなテーマで実施しています。先日は、住宅の断熱性能を表す平均熱還流率・Ua値、一次エネルギー消費量の基準を示すBEI値についてお話ししました。

 会社全体が環境のために行動するためには情報が必要で、情報に説得力を持たせるには知識が必要です。勉強会によって得た知識が営業力強化につながることを願っています。 

澁谷:勉強会を通じて知識を得ることの最大のメリットは、営業トークに幅と厚みが出ること以上に、土地や建築物の見え方が変わり、環境性能を含めて不動産を評価できることだと感じています。例えばデベロッパーへの融資の際、環境認証の取得を含めた建築費の妥当性やスケジューリングといったことも評価できれば、適切なアドバイスができ、環境性能と収益性の最善のバランスをとることができるわけです。

「住むだけでエコになる住宅」に投資する意義を伝え、新しい潮流を作りたい

――勉強会などでの知識の蓄積と普及は、不動産の評価基準において「環境」の重要性がより高まったときに大きなアドバンテージになりそうですね。 

澁谷:SAFがSBI新生銀行グループの一員となったことで、私たちの知見をどのようにファイナンスに活かしていくかが問われるようになると感じています。 

環境不動産の適切な評価と資金ニーズへの対応はSBI新生銀行でも取り組んでいるところなので、今後は蓄えたノウハウを糧にその一翼を担っていきたいですね。 

本間:これまでは、新耐震基準を満たしていて建築確認済証があれば融資条件を満たすことができました。2025年4月の省エネ法改正に伴って建築基準法が改正されると、省エネ等級、ZEH、BELSといった要素が評価対象になり、融資条件としても検討しなければなりません。新しい制度下では、他社と比べたときに我々の優位性は生きてくると思います。

SBI新生銀行グループの一員として、環境配慮型の不動産作りに貢献したいと話す
本間さんと澁谷さん

改正省エネ法は基準レベル的にも、コスト的にもクリアの難度は高くありません。SAFでは、融資条件として耐震等級、省エネ等級に着目し、評価基準を確立させることが急務ですね。
 
澁谷:環境に良い建物を建てると建築費が高くなり、売値も家賃も上がる。だから環境配慮のレベルを下げてそれなりの物を建てるか、売値を上げるか、自分が損をするしかない。環境配慮型の投資不動産については、不動産会社と投資家、さらに我々のようなアセットファイナンスの三者が、身動きのとれない状況になっているといえるかもしれません。
 
収益面で痛みを分け合ってでも未来のために価値がある不動産を作ろう、投資しようという考え方が浸透していくと、きっと潮目は変わるでしょう。
 
設計段階から環境に配慮した対策をしてコストオーバーランを防げる、長期的な利益が見込める環境性能の良い建物を、根拠をもって見極められるといった我々の特徴を活かして融資を進めるとともに、建物のトータルライフタイムを見据えた投資の重要性を呼びかけていきたいですね。

本間:ESGの観点を踏まえた不動産投資が世界的潮流となる中、作り手にも借り手にも「住むだけでエコになること」の価値をわかりやすく伝え、事業としての落としどころを判断できる我々の経験とノウハウが生きる場面は増えていくでしょう。
 
省エネ建物が住む人にとっていかに有用であるかを伝える一助として2024年4月から省エネ性能のラベル表示が売り主、貸主、サブリース事業者に課せられましたが、あくまでも努力義務でしかありません。
 
省エネ建物が光熱費やCO2の削減、ヒートショック予防など健康維持にも貢献することを、営業活動などを通じて一人でも多くの方に知っていただき、エネルギー使用量が少なく寿命の長い建物に投資したいと考える人の裾野を広げていきたいですね。

【編集後記】
「本間さんに案件の評価を依頼すると、審査部より通過するのが厳しいけれど、職人的な視点で締めてくれる存在です」と、尊敬の眼差しを向ける澁谷さん。SAFとしても、本間さんの環境配慮に関する豊富な経験・知識に厚い信頼をおいているといいます。お二人のリーダーシップのもと、SAFは新たな挑戦と変革を重ね、金融業界における存在感をさらに高めて、新しいシナジーを生み出してくれそうです。

取材・文:藤巻史 撮影:橋本千尋

この記事はSBI新生銀行グループのSBI新生アセットファイナンスの記事です


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