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超高齢社会を全力で支えるヘルスケアファイナンス~医療・介護施設への融資を通じ社会貢献と利益の両立学ぶ

「正直に言うと4年前にこの部署に来るまで、何をやっているかよく知りませんでした」
「確かに派手ではないですね。営業などを一通り経験し、専門知識を高めたい、あるいは社会課題により直接的に関わりたいと配置される人もいます。勉強することは多いです」

新生銀行ヘルスケアファイナンス部の伊藤さんと山田さんは、顔を見合わせて笑いました。伊藤さんと山田さんの在職はそれぞれ6年目と5年目であり、「管理職は2~3年で異動することが多いので、2人とも異例の長さ」だそうです。

派手さはなくても、同部署の存在感は社内外で着実に高まっています。超高齢社会を見据え医療・介護施設の整備を支援してきたヘルスケアファイナンス部は、病院に対するノンリコースローンなど、先進的な取り組みを積み上げ、コロナ禍の時代、医療・介護業界だけでなく同業の金融業界からも相談が絶えない存在になっています。

語るひと:
新生銀行 ヘルスケアファイナンス部
部長   伊藤通英
統轄次長 山田匡昌
※役職はインタビュー当時

新生銀行にしかない特長を持つ
ヘルスケアファイナンス部

2010年に設立されたヘルスケアファイナンス部は、医療・介護施設に累計1,000億円以上のローンを実行してきました。特に強みを持つのが、不動産のなかでもヘルスケア施設(医療・介護施設など)のみを担保とし、その担保不動産から得られるキャッシュフロー(賃料収入や物件処分価値)を返済原資とする「ノンリコース」型のファイナンスです。
介護事業者は施設所有者と長期の建物貸借契約を結び、施設を運営します。事業者にとっては巨額の投資、借り入れをせずに介護施設を増やせるメリットがあります。

ノンリコースローンの仕組み

新生銀行は日本全国および一部海外を対象として医療・介護施設に特化して不動産ノンリコースローンを中心としたファイナンスを提供していますが、ヘルスケア領域に特化したファイナンスを提供する部署は、日本の金融機関でもまれな存在です。伊藤さんはその理由を「率直に言うと、不動産ファイナンスとして見ると、オフィスビルや商業施設に比べて手がかかる割に、収益が少ないからです」と説明します。

伊藤「オフィスビルやマンションはテナントが頻繁に入れ替わるし、商業施設のテナント変更には許認可が必要でないのに対し、医療・介護施設は許認可を持った単独の事業者が長期で運営することを前提としているので、事業者をしっかり見極めないといけません。事業者の財務や経営力はもちろんのこと、立地するエリアの環境、人口動態や介護保険制度の将来像にも目配りする必要があります」

新生銀行がローンを提供した介護付き有料老人ホーム(東京都江戸川区)

「また、医療・介護施設の規模は通常、不動産ファイナンスの対象となるオフィスビルや商業施設よりも小さくなります。立地も全国に分散しており、ヘルスケアファイナンス部員は北海道から沖縄、シンガポールまで飛び回っています」

伊藤「(医療・介護施設へのノンリコースローンは)審査のために勉強することが多く、また1件あたりの融資金額もそれほど大きくないので、労力・収益面で決して効率がいいとはいえない。オフィスビル、商業施設なども担当して、収益ノルマを負っている組織で扱うと、医療・介護施設は社会的意義が高くとも検討が後回しになりがちです。だから新生銀行は、この重要な分野が後回しにされることがないよう、大きな決断をしました」

事業の必要性と将来性を正しく評価し、
取れるリスクは取りたい

新生銀行は2000年代からオフィスビル、商業施設、ホテル、住宅などを対象にノンリコースローンを積極的に手掛け、その中で医療・介護施設向けのノンリコースローンも取り扱ってきました。しかし、そこには前述したような「医療・介護施設への投融資の特殊性」という問題がついて回りました。

2010年、新生銀行はヘルスケアファイナンス部を独立させる決断を下しました。それは、「高齢化社会という日本の課題に真正面から取り組む」という覚悟の表明でもありました。

新生銀行のヘルスケアファイナンス部は健康長寿社会への貢献を業務目標に掲げています

伊藤さんによると、ヘルスケアファイナンス部創設に尽力した初代部長は、「世の中の介護施設の大半はオフィスやマンションと比べると立地もよくないし、経営基盤も強くない。その中でも一生懸命やって、今後もいいサービスを提供してくれると信じられるところには、我々がお金をつけて支えなければ」と度々口にしていたそうです。

ヘルスケアファイナンス部は伊藤さんが5年半前に掲げた業務目標に「地域医療・介護サービス、健康長寿社会実現に貢献」することを掲げていますが、そこにも「社会のために取れるリスクは取って、ファイナンスを提供するのが我々の使命」との思いが込められています。

■ヘルスケアファイナンス部の理念
1.地域医療・介護サービス、健康長寿社会実現に貢献
・医療関連施設・介護施設の経営を金融サービスでサポート
・世界のヘルスケアファイナンスの研究とアジアでのファイナンスサービスの具現化
2.高収益実現をめざしてのテイラーメイド対応
・貢献したいという気持ちと信頼関係、分析力、対応力、スピード力で勝負 
・他金融機関が対応しない、できない顧客ニーズに対応することでの収益機会を探求
・上司、外部、お客様を含め使えるリソースをフルに使ってのサービスの質、スピードの向上、非効率の改善

コロナ後の病院再建へ地域金融機関と連携

部の発足前も含めると20年近く高齢化社会という課題に取り組み、手間暇かけてノウハウとネットワークを積み上げた新生銀行のヘルスケアファイナンス部は、新型コロナウイルスの流行が日本社会やビジネスを揺らす中でも、安定した強さを見せています。

「コロナ禍でヘルスケアファイナンスの安定性が見直された」と語る山田さん

山田「コロナ禍で商業施設やホテルは人流が減って経営が厳しくなりましたが、介護施設は介護を必要とする高齢者が実際そこに住まわれていることから、大きな影響を受けていません。この2年間でパフォーマンスの安定した投融資先としての介護施設の価値が証明され、今まで以上に国内や海外の機関投資家や年金基金などの投資家がお金を入れるようになっています」

コロナ禍を機に、他の金融機関から新生銀行の持つ知見を求められることも増えました。伊藤さんは、医療・介護マーケットは長期的には拡大が見込まれるものの、超高齢社会が進行し財政支出が抑制される中で、コロナ禍で病院の経営が悪化し、補助金、コロナ緊急融資頼みになっていることに多くの金融機関が危機感を強めているのではないかと考えています。

伊藤「今は緊急融資や補助金があるので表面化していませんが、補助金がなくなり緊急融資の返済が始まると、苦しくなる病院が出てくるでしょう。地方の病院を支えている地方銀行には、『来るべき時に備えないと』と考えている方が多くいらっしゃると思います。
そこで私たちは地域金融機関に声を掛け、これまで個別に約30行との間で医療・介護施設のノンリコースローンを紹介する勉強会を開催してきました。
地方銀行に地域の病院の状況を把握してもらい、具体的なノウハウについては新生銀行が支援する体制をつくれたらと考えています」

山田さんは、ヘルスケアファイナンス部での4年間を振り返り、「扱っている残高が他の分野に比べて小さいので、行内では“花形”ではないかもしれません。けれど不動産ノンリコースの経験が積めるだけでなく、病院・介護のマーケット調査、事業会社のクレジット分析、最近では投資対象となる施設の投資家への紹介や、事業者に対するM&Aの紹介と、ベテランでも学ぶことが多くやりがいがあります」としみじみ語りました。

施設経営者から学んだサステナビリティの神髄

伊藤さんは2017年の部長就任時、初代部長から歴代部長に引き継がれてきた「自分の親を入れたいと思える施設を増やしてほしい」「ヘルスケアインフラを整備するという目的の中で収益をあげてほしい」とバトンを受けました。そして医療・介護施設の経営者とひざを突き合わせる中で、ESG(環境、社会、企業統治)とサステナビリティの神髄を学んだそうです。

初代部長からの意志を引き継いだ伊藤さん

伊藤「この分野は収益目的でやっている人は少ないです。でも、良いサービスを提供し続けるためには儲けないといけない。だから優れた経営者は『入居者・患者の幸せ、快適・健康な生活』という目的を最上段に置き、業務改善や人材教育に投資して収益とサービスの質を両立しています」

財源の確保できない活動にサステナビリティはない――。介護事業者から得た気づきは、ヘルスケアファイナンス部の運営や人材教育でも実践されています。

伊藤「私たちの部署の目標は健康・長寿社会への貢献ですが、その目標の下に毎年度の収益目標も置いています。どんなに素晴らしい取り組みでも赤字では続きません。医療・介護事業者の伴走者であり続けるために、私たちも稼げるところで稼ごうと意識しています」

「病院や介護施設の経営者の熱意、スタッフが誠実に働く姿、そして患者・入居者の方の笑顔が、他の金融機関がやらないような案件に前向きに取り組む原動力になっています。事業の必要性や将来性を正しく判断し、資金面で支援したいと強く思います」と山田さんは話しました。

ヘルスケアファイナンスの草分けとして、他の金融機関が注力しない分野にこつこつと取り組んできた結果、サステナブルファイナンスの一種であるソーシャルローンとして実行する投融資も積み上がってきています。伊藤さんは「時代が私たちに追いついたということですかね?」と少し照れながらうなずきました。

撮影/今村拓馬

【編集後記】
2000年に介護保険制度がスタートした当初から、ヘルスケア施設に特化したファイナンス事業は面白いテーマと感じていた、という初代部長のことを話す時、伊藤さんも山田さんも何かを思い出したような表情になりました。初代部長からのバトンをしっかり受け取り、時代の大きな流れを捉えつつ、施設の経営者や運営者の熱意と、施設を利用する人々の気持ちに寄り添う姿はとても頼もしく見えました。これからのヘルスケアファイナンス事業の躍進に期待が高まるお話でした!
(新生銀行グループサステナビリティサイト運営チーム)

こちらは、新生銀行グループの新生銀行に関する記事です。

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