学生も採用企業も実りの多いインターンシップ。サステナビリティがキーワード!
学生と企業の出会いの場であるインターンシップを、もっと「実りあるもの」にしたい━━。
そんな採用担当者の思いに共鳴するメンバーが集まり、新しいカタチのインターンシップが動き始めました。
キーワードは「サステナビリティ」。
プログラムの企画・運営に携わった社員にお話を聞きました。
就活をさらに意味のあるものに
学生と社員が同じ目線で
向き合うためのプログラム
――「学生と企業の双方に実りの多い」インターンシップについて、企画のねらいや込めた思いについてお聞かせください。
小林:インターンシップは業務体験を通して会社の雰囲気を感じてもらえますが、学生の就活で本当に意味のあるものだろうか――? その疑問が原点です。雰囲気を体感するだけではなく、それなりに実務もわかったら参加する意味を見出してもらえるはずです。
「新生銀行に入ったら社会人としてどうなるか、どう進んでいくか」を知りたい。それが学生の本音だったら、会社がただアピールするだけではなく、学生が知りたいことを真摯に伝えていかなければなりません。学生にとってためになり、プログラムに共感してもらえたら、学生にも自然に志望してもらえるのではないでしょうか。
なぜサステナビリティをプログラムのテーマに取り上げたかというと、学生たちと同じ目線で考え、向き合っていきたいと考えたからです。「サステナビリティを実践する上ではどんな課題があり、そこにどう向かい合っているのか」をストレートに伝えていく。そのプロセスを通して、学生たちも「会社におけるサステナビリティ」について実感を持って考えてもらえるでしょう。
そこで、サステナブルインパクト推進部と協働することにしました。このプログラムを初めて実施した2020年度には清水さん、2年目の2021年度には山本さんが担当していただき、インターンシップの中でサステナビリティに関するプログラムを盛り込むことができたのです。
清水:金融分野に感度が高く、優秀な人材の入社を支援できるのであれば、協力は惜しみません。小林さんの説明を聞いて、新生銀行だけではなく、金融業界全体に魅力を感じてもらえるプログラムに大きな期待を持ちました。私たちとしても、オリジナリティがあるプログラムが提供できたと考えています。その結果として、このプログラムは学生、そして社内の評価も高いようですね。小林さんが人事部に異動してからスタートした取り組みですが、人事部内での反応はどうだったんですか?
小林:「やってみたらいいんじゃない?」と前向きな評価をもらい、1年目からポジティブな空気の中進めることができています。新生銀行の社風として「チャレンジを受け入れる風土」が挙げられますが、私もその土壌を強く感じています。インターンシッププログラムを語る時には「量か質か」という論点がつきものです。
たとえば「量」を追求するのであれば、半日程度で終わるライトなインターンシップを設定し、100人×6回の実施で600人の学生に来ていただく、というアプローチもあります。一方、私が企画したプログラムは50人規模の一点集中型。いわば「質」を追求するというアプローチです。「コンテンツ力でどれだけ学生に迫れるか、これも一つの挑戦だね」と話し合ったことを思い出します。
山本:このプログラムは、インターンシップでありがちな「学生と企業のミスマッチ」をなくすことも狙ったものだと感じています。インターンシップで良いことばかりを伝えても、入社後に「聞いていたのとぜんぜん違う」と感じられてしまうようでは、学生にとっても企業にとっても不幸せな結末が待っています。仕事について包み隠さずに伝え、良いところも悪いところも知ってもらう。それらをどう考えるかは企業側が決めるのではなく学生に委ねる、いわば押し付けがましくないスタンス。それが本インターンシップの特徴ではないでしょうか。
私たちもプログラムの課題に対する「答え」を用意していました。けれども、それは決して模範解答ではありません。あくまでも「こんな考え方もできるんじゃない?」というスタンスでいるよう意識することで、学生たちと本音で話し合える場を創ることを心掛けました。関係がフラットであったからこそ、学生たちもアクティブに関わってきてくれたんじゃないでしょうか。
小林:そうですね。私たちが描いていたのは、新入社員と先輩のフランクな関係性に近いイメージです。山本さんが言ったように、発表についてもひとつの正解があるわけじゃない、どんな時もフラットな場を作ろう、と心がけてきました。僕たちは君たちと対等に臨んでいるよ。そのスタンスが、学生たちの心理的な安全性を担保してきたのだと思っています。
参加した学生の中からは、「このインターンでつながった仲間とリアルで集まりました」という、うれしい反応が寄せられました。このプログラムをきかっけに学生同士がつながり、将来の共創などが実現したらうれしいですね。
コロナ禍にあって
学生と企業の思いがマッチ
オンライン開催ならではの意義、可能性がある
――企業のリアルな姿が伝わるから、学生も「この会社で働いてみたい」という思いを持つ。それが理想的な関係性につながっていく。プログラムの考え方自体にサステナビリティを感じます。プログラムはどのように編成されてきたのでしょうか。
小林:この2年はコロナ禍ということもあり、オンラインでの開催を前提に設計し、4日間のプログラムのうち、間の2日間はどのように使ってもいいフリータイムとしました。初日の講義を受けた後は、最終日にしっかりとしたクオリティのアウトプットさえ出来れば、大学の授業やバイトで時間を使っても良いこととしました。これは「結果をしっかり出すならば、自由に働ける」という新生銀行グループの風土に基づくもの。その考え、イズムを共有してもらう点でも意義があったのではないでしょうか。
清水:小林さんから提示された枠組みは、私たちが課題のために最低限必要な前提知識を初日に学生にインプットし、最終日に学生がアウトプットする、というものでした。小林さんは学生に対しても、「アウトプットは、部下が上司にプレゼンするようなイメージで行ってほしい」と強調していました。通り一遍の講義、説明会は受け身に終わってしまうものですが、社員にプレゼンを行うこと前提にしたインプットとなれば、学生たちの集中の度合いも変わってくる。こうした枠組みが実効性のあるインターンシップにつながったと考えています。
山本:清水さんが1年目に作った枠組みをベースとし、2年目には別の角度で作り込みをしていきました。昨今、「ESG」や「SDGs」という言葉をはじめ、サステナビリティ分野に関する言葉をメディアで見かけない日はありません。また、この分野は現在進行形で新しい動きや基準が発表されていることに加えて企業による取組のアピール等もあり、サステナビリティに関する概念や用語がやや拡散気味になっているのではないかという印象がありました。そこで、そもそもなぜ企業というアクターがサステナビリティやESGを考慮した経営に取り組まなければいけないのか?という原点を確認するべく、企業の社会的責任に関する過去・現在・未来の各段階を整理して、全体像を提示することから説明を始めました。
清水:説明会というスタイルで講義していくと、どうしてもサステナビリティは“きれいごと”に聞こえがちです。しかし、私たちを含むすべての営利企業は収益をあげて事業を持続・成長させていかなければならず、きれいごとだけで終わらせるわけにはいきません。プログラムを一緒に検討したメンバーとは「ビジネスとサステナビリティのつながりを実感できるような場にしよう」と話し合い、プログラムを設計しました。
これからの時代、ビジネスの現場でサステナビリティは避けて通れないテーマです。自分が営業担当者だったら、クライアントとなる会社にどんな提案ができるのか? 学生たちには、その課題を求めました。
山本:きれいごとでは終わらない――その観点でいうと、参加した学生から「利益とサステナビリティの取り組みが摩擦を起こした場合、どうしたらいいのか」という質問が寄せられたのは印象に残っています。利益とサステナビリティが摩擦を起こすような事業は今後存在し続けることは難しく、中長期的には市場から退場させられることになるでしょう。我々は究極的には、上記のような質問が出ない世の中、つまり利益とサステナビリティが当たり前に両立する世の中を目指していますが、学生の方からの質問はサステナビリティを考える上で本質的な問いかけであったと思います。
小林:私は「利益追求とサステナビリティは二律背反ではなく、同時に追求することが出来る概念だと思いました」という学生の反応が印象に残っています。サステナビリティへの興味で止まっていた学生が思索を深め、考えを言語化する過程には私も刺激を受けました。こうした理解の深まりは短期的にも長期的にも学生のためになると思っています。「新生銀行のインターンシップに参加して他企業に内定をもらえました!」と元気よく報告をくれた学生もいました(笑) 清水さん、山本さんが組んだプログラムの実効性をあらためて感じましたね。
――学生も企業も幸せなかたちで持続していく、そんなインターンシップのあり方が見えてきました。最後に、今後の期待についてお聞かせください。
小林:清水さんと山本さんのおかげでコンテンツの訴求力はあると思うので、もっと効率的かつ効果的な開催方法を考えたいと思います。また、コンテンツ自体を広げることを考えています。まだまだ新生銀行には訴求できる強みがあると思っています。2022年4月には当該プログラムを経験した一期生が入社してきますから、このプログラムを仕組み化して継続し、新生銀行の採用活動における風土としていきたいですね。このように実践的なプログラムで学生とマッチングできるようになれば、入社後の職務などをあらかじめ合意した上で採用していく「ジョブ型雇用」に近いかたちも視野に入ってくる可能性もあります。
清水:私が初年度にプログラムを企画・実施し、そのちょうど1年後に山本さんが同じ枠組みで実施されました。その内容を見聞きして改めて感じたのは、わずか1年の間でも学生に伝える情報がアップデートされているということ。サステナビリティ、SDGsの分野の進展、進化はそれほどまでに速いのです。社会人でも、これまで抱えてきた固定概念から脱却できず、サステナビリティの概念や世の中の流れをキャッチアップできない人もいるでしょう。もちろん、金融業界に入ったら、財務諸表の読み方や金融の専門知識を身につけながら、実地で学んでいく必要もあり、習熟には時間がかかります。しかし、SDGsやサステナビリティについては学生も社会人も殆ど同じスタートラインに立っており、学生はいくらでも社会人の先輩を抜いていける分野と言えるのです。
サステナビリティからは話が逸れますが、学生と社会人の順応力の差はプログラムの中でも感じました。デジタルネイティブ世代の学生たちは初対面がオンラインであっても即座にコミュニケーションを取り、チーム間のコミュニケーションを深めていきました。画面越しのコミュニケーション力では私たち社会人を凌駕しているという印象がありました。このプログラムを経験した世代が入社してきたら、私たちはあっという間に抜かされるのでは……そんな思いを抱いたほどです。
山本:私も同感です。今の学生は、「環境破壊や人権侵害を引き起こしながら収益を上げている会社が良いわけがない」という感覚、つまりサステナビリティのマインドをごく普通に持っています。この感覚が端的に示すように、ビジネスにおける「ゲームのルール」は急速に変わりつつあるのです。「サステナビリティを無視した事業は永続しない」という意識を学生のうちから持っているのは大きなアドバンテージになるでしょう。入行後にも、配属された各部署に気づきを与えてくれる、そんな期待を持っています。学生・企業双方にとって意義のあるこのインターンシッププログラムに大きな期待を感じています。