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期待のエネルギー・地熱を地域のために。想いを乗せたプロジェクトファイナンス【Vol.1】

プロジェクトファイナンスとは、ある特定の事業・プロジェクトから生み出される収益およびキャッシュフローを返済の資金源とするファイナンス手法です。新生銀行はこれまで再生可能エネルギー事業に対するプロジェクトファイナンスを数多く行ってきました。その一つが、昨年熊本県南阿蘇村に建設する地熱発電所向けのプロジェクトファイナンスの組成です。新生銀行初の挑戦となった地熱発電へのファイナンスは、どのように実現したのでしょうか。担当者の奮闘に迫ります。

語るひと:
新生銀行 プロジェクトファイナンス部
営業推進役 元吉一平
部長代理  岡元大輔

新生銀行初、地熱発電所に向けた
プロジェクトファイナンスとは

――地熱発電は掘削した井戸から蒸気と熱水を汲み上げ、その蒸気によってタービンを回して発電するものです。地熱発電に向けたプロジェクトファイナンスは新生銀行でも前例のない取り組みだったそうですが、まずはどのように組成されたのでしょうか。

元吉:このプロジェクトファイナンスの検討が具体化してきたのは2019年のことです。本件のスポンサー様で、ヘルスケアファイナンス部でお取引頂いている株式会社フォーカス様、当部でも様々なお取引を頂いている株式会社レノバ様より相談を受け、プロジェクトファイナンスとして実現できないか、という要望が当部に寄せられました。脱炭素社会に向けた動きが加速する中、電源の多様化を目指すスポンサー様の取り組みを応援していきたい。未知の領域ではありましたが、そんな思いからプロジェクトファイナンスを検討していったのです。

岡元:日本は火山国として知られており、世界第3位という地熱資源を有しています。私たちを癒やしてくれる温泉は恩恵の一つですね。そして、その資源を活用した地熱発電にも大きな期待があります。この発電は地下に眠る膨大な熱エネルギーを活用するため、半永続的な利用が可能であること、そして天候や季節による変動を受けず、蒸気が出続ける限り一年を通じて一定量を発電できる安定性があります。また、自然が生み出す蒸気を使うため、建物の建設から運用、解体に至るまでの過程で排出されるライフサイクルCO2排出量が他の発電方式と比較して少ないのも特徴です。このため、脱炭素社会の実現に向けた重要な電源の一つ として期待が寄せられています。政府も開発の促進に力を入れており、今後はさらに注目が集まっていくでしょう。

熊本県阿蘇郡南阿蘇村で建設が進む。

挑戦に事欠かないプロジェクト 
課題を抽出し、解決へと導いていく

――プロジェクトファイナンス部として、再生可能エネルギーに向けたプロジェクトファイナンスには10年以上も取り組んできたそうですね。しかし、地熱発電向けは初めての試みです。地熱発電ならではの課題や難しさは、どんな点にあるのでしょうか?

元吉:第一に、地熱発電へのファイナンスそのものがまだまだ発展途上の分野だということがあります。国内の大型地熱発電プロジェクトは、この50年で20件程度に過ぎず、銀行としての検討件数も他電源比で少なく、ノウハウが蓄積されているとは言えません。地熱発電に適したエリアは自然保護地域内にあることが多かったり、掘削によって近隣の温泉に影響が及ぶ懸念から地元との合意がうまく図られず、開発がなかなか進んでこなかったという背景もあります。また、温泉権という権利を契約上どのように扱うかという問題も、解決しなければなりませんでした。

元吉さん

岡元:しかし、私たちには10年以上に及ぶ再生可能エネルギーのプロジェクトファイナンスの実績、そして海外のプロジェクトを含めて様々な事業者、アドバイザーと築いてきたネットワーク、ノウハウがあります。たとえば温泉権の課題を解決するためには、早期から弁護士の協力を仰いで判例の研究、リスクの整理を進めました。その結果、銀行としてある程度納得し得る打ち手をきめ細かく整理することができました。

元吉:また地熱発電には、事業期間中も安定して蒸気が出続けるのかという課題もあります。この課題に対しては、技術コンサルタントの協力、そして元熊本大学の當舎利行先生をはじめ様々な業界関係者に示唆、アドバイスをいただき、蒸気の減衰リスクを理解して対策を考えることができました。行政の世界でも、産官学金の連携の重要性を問われることが増えているかと思いますが、先生方の学の世界と我々のいる金の世界は普段、特に距離を感じることがあります。しかし、今回はこの距離を縮め、熱意あるコミュニケーションを交わすことができたような気がしています。

岡元さん

ファイナンスの現場から
脱炭素社会の実現へ革新的な一手

――地熱発電は、脱炭素社会の実現に向けて注目を集めるエネルギーです。金融の現場からの新たな一手にはどのような期待が寄せられているのでしょうか。

岡元:地熱発電は、安定して発電できる純国産のエネルギーとして期待されています。新たな事業者の市場参入も期待されており、地熱発電には追い風が吹いているように感じます。ただ、これまで資金調達の機会が少なかったため、金融機関もノウハウがなかったのが現実です。今回のプロジェクトファイナンスが革新的な一手になり、市場のさらなる活性化につながっていければと考えています。

元吉:地熱発電は掘削リスクも高く、開発に10年以上の期間を要するという特性もあります。今回の案件以降、事業者、金融機関からの問い合わせ、相談も増えており、大きな手応えを感じています。地熱発電所がエネルギー源とする蒸気は地下にある広範な地熱系によって支えられています。この生命線を確保していくためにも、私たち自身がより地域を理解するとともに、スポンサー様がより主体的に脱炭素社会の実現へ貢献されようとしていることを正しく評価する必要があると考えます。今回の取り組みは「地熱発電×ファイナンス」の第一歩です。横展開を通して事例を蓄積していくことで、このプロジェクトで得た知見、ノウハウをさらに磨き上げ、多くの金融機関にも賛同してもらえるような、プロジェクトファイナンスの発展的なアレンジを目指します。スポンサー様の熱意を一つでも多く形にできる資金調達のかたちを考えていきたいですね。

【編集後記】
取材・撮影に少々緊張気味だったお二人。冒頭にお互いをプレゼンし合う「他己紹介」をお願いしたところ、「困っている人を放っておけないところが信頼できる」(元吉さん→岡元さん)、「悩んだらすぐに相談できる、頼れる存在」(岡元さん→元吉さん)と、信頼に満ちた紹介コメントが交わされました。きっと、この強固な連携がプロジェクトを成功に導いたのでしょう。

取材・文/佐々木正孝 撮影/辰根東醐

「期待のエネルギー・地熱を地域のために。想いを乗せたプロジェクトファイナンス【Vol.2】」の記事はこちら📌

こちらは、新生銀行グループの新生銀行に関する記事です。

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