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期待のエネルギー・地熱を地域のために。想いを乗せたプロジェクトファイナンス【Vol.2】

プロジェクトファイナンスとは、ある特定の事業・プロジェクトから生み出される収益およびキャッシュフローを返済の資金源とするファイナンス手法です。その中で、新生銀行初の地熱エネルギーへの取り組みとなった、熊本県南阿蘇村の地熱発電所に向けたプロジェクトファンナンスについてご紹介します。地熱ならではの課題や実際の対応などについて聞いたVol.1に続き、今回は、社会課題の解決を見据え、プロジェクトに情熱を傾けた担当者の想いをお届けします。

「期待のエネルギー・地熱を地域のために。想いを乗せたプロジェクトファイナンス【Vol.1】」の記事はこちら📌

語るひと:
新生銀行 プロジェクトファイナンス部
営業推進役 元吉一平
部長代理  岡元大輔

時代に即したファイナンスを見据え
金融グループが抱く情熱

――地熱発電というテーマでは、新生銀行としても前例のないプロジェクトファイナンスでした。様々な課題を乗り越えるにあたっては、組織の風土、メンバーのモチベーションが組成を後押しした部分もあったのでしょうか。

岡元:私は中途入社でプロジェクトファイナンス部に参画し、元吉さんのリードの下で取り組んできました。プロジェクトファイナンスを手がける過程では、銀行として整理が難しいもの、時間の制約があるものなど、明らかに実現が困難であろう案件に出合うこともあります。しかし元吉さんには、チーム長として「どうやったら実現するか」という解決策を模索し続ける姿勢があります。今回の地熱発電のプロジェクトもそうでしたが、その向き合い方が成功、組成に結びついているようにも思います。そして、それはチームやプロジェクトファイナンス部、ひいては新生銀行グループの持つ気風なのだとも感じます。

地下から汲み上げられた蒸気と熱水は気水分離器で分離され、蒸気のみが発電に用いられる。

元吉:私たちプロジェクトファイナンス部は「クリーンエネルギー」「デジタル化」を両輪として進んでいます。目指しているのは、インフラの整備を通して社会課題の解決に資するサステナブル・フォーカスの投融資であり、新たな取り組みにも積極的です。

岡元さんは地方銀行から転職して新生銀行へ、そしてプロジェクトファイナンス部に加わりました。前職でもプロジェクトファイナンスに携わっていて、本腰を入れて取り組みたいという思いで参画しています。周囲や新たな取り組みに常に目配りし続けるスタンスはチームに通ずるものがあり、だからこそ「新生銀行で初」のプロジェクトファイナンスとして結実したのでしょう。

地域と共にあり、地域と共に進む 
プロジェクトファイナンスの姿

――Vol.1の記事では、井戸の掘削を行う地熱発電は近隣温泉への影響も考慮しなければならない、とお聞きしました。地元への配慮、貢献についてはどのようにお考えですか?

岡元:再生可能エネルギーですから、脱炭素社会に向けた取り組みとして期待がかかるのは間違いありません。そして、地元や周辺地域と共生し、共に歩む地熱発電所であってほしい、その思いは変わりません。スポンサー様にも多くの配慮、お考えがあり、例えば温泉モニタリングなどを通して近隣温泉への影響が出ないよう慎重にプロジェクトを進めていますし、熊本地震に対しても地域に寄り添いながら復興にも貢献したいと考えて下さっています。

元吉:偶然にも、岡元さんも私も九州の出身。発電所が建設される熊本県には地縁があります。私の原体験は、熊本に住んでいた幼少期の記憶です。週末になると家族と車で出かけ、阿蘇大橋を渡って、まさに今回の事業地の先にある温泉に足を運んでいました。車窓からの景色を思い返すと、確かに山中から蒸気が上がっている場所があったような記憶もあります。両親と見たあの風景に、自分が社会人として10年以上も培ってきたファイナンスの知見で彩りを加えられたら――そんな想いもあるんです。

岡元:私は地方銀行に勤務していた頃、2016年の熊本地震に遭遇しました。当時担当していたお客さまが被災されたことは強く印象に残っていますし、甚大な被害、そこからの地道な復興を目の当たりにしてきました。このプロジェクトファイナンスで地熱発電所が稼働し、それも復興の一助になれば。そんな想いを胸にプロジェクトに臨んできました。

阿蘇地域の地熱は、こうした豊かな自然の恵みの一つ。

地熱発電プロジェクトから、その先へ 
メンバーと共に見据える未来

――大地のエネルギーを活用して環境に配慮し、地元の復興にも思いを馳せるお二人ですが、このプロジェクトの先には何を見据えていますか。今後の展望をお聞かせください。

岡元:地熱特有の論点に遭遇し、ファイナンス上の問題の解決に向けて尽力する中、地熱発電は他の再生可能エネルギーよりも地域共生がさらに問われる電源だと感じています。地域に根ざした発電所を目指し、地元関係者との関係も強固なものにできればと思います。

また、本プロジェクトを含め、私たちのチームもより挑戦的なプロジェクトに携わる機会が増えてきました。再生可能エネルギーだからといって何でもプロジェクトファイナンスとして組成できるわけではありませんが、我々が事業やそれを取り巻く社会・環境をより深く正しく理解することで新たな解決策が見つかってくる部分もあると思います。これは新生銀行グループが掲げる「事業を通じたサステナビリティの実現」にもつながるものでしょう。環境や社会課題などの解決を目指し、腰を据えて取り組んでいかなければなりません。

岡元さん

元吉:新生銀行では、サステナブルインパクト評価室による新生グリーンローン、新生ソーシャルローンなどの評価も行っており、サステナブルファイナンスの諸原則に合致したローンには木蓮(もくれん)をかたどったインパクト評価のロゴマークを付けてプレスリリースと認定証の授与を行っています。

今回の案件は明確な環境改善効果が評価され、環境性(グリーン)のロゴマークが付与されました。これ自体素晴らしいことなのですが、日本全国に視野を拡げると地熱ポテンシャルのある地域は、例えば過疎化やまちづくりといった社会課題を抱えるエリアでもある場合が多いと捉えています。今後、私たちはサステナビリティ全般を表すピンク色のインパクト評価のロゴマークを獲得する案件を進めるなどポジティブ・インパクト・ファイナンスとして、様々な社会課題の解決にも寄与し、それを何等かの形で可視化できるようなプロジェクトファイナンスも組成していければと考えています。

元吉さん

【編集後記】
熊本県は別名「火の国」と呼ばれていますが、まさにその通りに熱い期待を集める地熱発電所、お二人のホットな情熱を感じた取材になりました。ふるさと、そして社会人としての思い出の地で着火したプロジェクトファイナンス。熱い想いの連鎖に期待したいですね。

取材・文/佐々木正孝 撮影/辰根東醐

こちらは、新生銀行グループの新生銀行に関する記事です。

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