ファイナンスの“評価”を通じて環境や社会全体にインパクトを【Vol.1】
サステナビリティ(持続可能性)やSDGs、ESGの視点に、ポジティブな社会的インパクトの概念を融合した「サステナブルインパクト」をコンセプトとして、新生銀行グループでは持続可能な社会を目指し、企業や事業に対して積極的な働きかけを行っています。サステナブルインパクトに携わるメンバーにご登場いただき、思いと取り組みを語っていただきましょう。
サステナブル×インパクト
部署名に込めた思いとは
――サステナブルインパクト推進部の内室「サステナブルインパクト評価室」のメンバーとして活動している朝野さんにご登場いただきました。「サステナブル」と「インパクト」という言葉のマッチングにはどんな意味があるのですか?
朝野:サステナビリティに関連した部署名は、いろいろな企業で聞くと思います。ご存じの通り、サステナビリティとは「持続可能な状態」という意味の言葉で、いわば理想的な社会を表しています。これに「インパクト」という言葉をかけあわせて、「持続可能な社会の実現のために、私たちがポジティブなインパクトを与えていこう!」という思いを込めました。
私が所属するサステナブルインパクト評価室の前身は、室長の平田みずほさんと私をはじめとするチームメンバーで立ち上げた「プロジェクトMokuren」です。このプロジェクトは、新生銀行グループが提供するファイナンスが環境や社会にもたらすインパクトを考えることから始まっていて、融資したプロジェクトが与える環境社会への影響を考慮し、当行グループのお客さまとなる企業のサステナビリティ推進をサポートするための下地を整えました。プロジェクト名を「Mokuren」にしたのは、木蓮の花言葉が「自然への愛」「持続性」だったからです。サステナブルインパクト評価のロゴマーク(白木蓮)には、その時の思いが込められています。
――マークにはそんな思いが込められていたのですね。執行役員の長澤さんのお考えもお聞かせください。
長澤:2030年のSDGsの達成まで残り8年となりました。社会・環境課題の解決に向けて、私たちもこれまで以上に真剣に取り組んでいかなければなりません。特に、気候変動については、パリ協定の遵守に向け、日本でもカーボンニュートラル(脱炭素)への取り組みが本格化しており、当行グループのお客さまとなる企業にとっても大変重要な経営課題になっています。これまでの環境・社会貢献活動は企業活動の周辺的な取り組みに終始していることもありましたが、今ではビジネス領域――まさに本業でサステナビリティの取り組みが求められています。
新生銀行グループでは、こうしたお客さまの環境・社会課題解決への取り組みに対して、多面的な支援を行っていきます。そうやって金融機関として積極的に関わっていく中で、環境や社会全体にインパクトを生み出していくこと。これがサステナブルインパクト推進部の重要なミッションと理解しています。
環境、社会へのポジティブな
インパクトを評価していくこと
環境や社会全体にインパクトを生み出すというミッションが分かりました。ところで、朝野さんは「評価室」に所属されています。サステナブルインパクトには、なぜ「評価」が求められるのでしょうか。
朝野:私たち評価室は新生銀行グループのファイナンスのサステナビリティ性を評価しており、「サステナブルインパクト評価」と総称しています。「サステナビリティ性」を分かりやすく言うと、「新生銀行グループがファイナンスする企業やプロジェクトの取り組みが、環境や社会の面からみて、ポジティブなインパクトを生み出しているかどうか」になります。サステナビリティ性を評価するにあたり、グリーンローン原則(環境性)、ソーシャルローン原則(社会性)など、「この要件を満たすものがサステナブルファイナンスです」という国際的な原則がいくつかあります。評価室の役割は、対象となるファイナンスがこれらの原則を遵守しているかどうかを客観的に分析、評価することです。
これまで銀行では、ファイナンス――つまりお金を貸す際、対象となる企業やプロジェクトの「信用リスク」、そしてお金を貸すことで得られる「リターン」の2軸で分析を行っており、環境・社会への「インパクト」の視点は持っていませんでした。サステナブルインパクト評価では、企業やプロジェクトが生み出す環境・社会へのポジティブなインパクトを「見える化」させます。インパクトを可視化させたこの評価を通じて、当行のお客さまとなる企業にサステナビリティ推進のマネジメントのツールや対外的な情報発信の材料として活用していただくことや、サステナブル投資に前向きな投資家が新生銀行グループのサステナブルファイナンスへの参加につなげていくことを目指しています。
最近の事例では、地熱発電のプロジェクトを対象にしたグリーンローン評価を行いました。
――評価を通じて企業の行動やお金の流れをサステナブルな方向へ——つまりインパクトを与えることを目指されているのですね。評価で心がけていることを教えてください。
朝野:国際的な規準を参照したサステナブルインパクト評価では、通常なら貸付人とは異なる第三者が実施するところ、私たちは貸付人が新生銀行となるファイナンスを新生銀行(評価室)が評価します。最近、「グリーンウォッシング」「SDGsウォッシング」という言葉を聞いたことがありますか?サステナビリティに関心が高まる中、サステナブルではないのに「環境にやさしい」「SDGsに貢献する」と偽ってうたっているものです。
私たちの取り組みも、新生銀行グループの中で自己完結しているものですから、見方によっては「ウォッシングをしている」と思われてしまうことがあるかもしれません……。ですので、私たち評価室は常に厳格さを念頭に置いて評価業務を行っていますし、評価レポートを当行のWebサイトで公表するなど、透明性の向上にも努めています。私たちの部内の企画チームはお客さまの側に立ちますが、お互いに独立した立場で接しています。
私個人としての心がけとしては、「環境・社会課題を解決したい!」という熱い思いは大事にしつつ、思いだけが先行しないよう、評価作業や社内外の方々との調整では冷静で客観的であることを心がけています。サステナビリティ実現への情熱と、評価者そして銀行員としての冷静さが求められる業務かもしれません。
インパクトに向かい合う、原体験
金融を通じて、未来を思い描いていく
――ミッション、具体的な評価の取り組みについてお話をいただきましたが、お二人はそもそもこの部署にくるまではどんなキャリアを積まれてきたのですか?
長澤:新生銀行では法人ビジネス分野でのリスク管理を長く担当してきました。振り返れば、東日本大震災の後、脱原発に伴って再生可能エネルギーの導入、促進に向けた機運が高まりました。再生可能エネルギーを国が一定の価格で購入する固定価格買取制度が導入され、当行ではこの制度を活かした再生エネルギーに関わるファイナンスに取り組み、主要なプレーヤーとなりました。当時、私はリスク面からプロジェクトファイナンスの仕組みづくりに関わったのですが、そこでの経験は現在の業務でも役立っています。
たとえば、気候変動については「リスクと機会」の両面からとらえることが主流になっています。リスク業務で培ったリスク感覚にビジネス機会の検討を加え、バランスをうまく取っていければと考えています。
朝野:長澤さんのお話で再生可能エネルギーが出てきましたが、私はプロジェクトファイナンス部に在籍し、国内の再生可能エネルギープロジェクトへのファイナンスに携わっていたことがありました。そこで、太陽光発電所の実査に足を運んだところ、想像以上に大規模な森林伐採、造成工事が行われていました。衝撃的な光景を目の当たりにし、確かに自然由来の電源だけれど「エコ」「自然にやさしい」と言えるのだろうか?「サステナビリティ」って何なのだろう?――そう考えたのが、サステナブルインパクトに向かい合う、私の原体験です。
サステナブル×インパクトに込めた思いを話しましたが、事業を通じてポジティブなインパクトばかりが生み出されるわけではありません。時には、ネガティブなインパクトが生み出されてしまうこともある。そんな側面を忘れてはならないと思います。
企業やプロジェクトへのお金の出し手である銀行の社会的責任として、ポジティブなインパクトを創出するものへ積極的にファイナンスを提供し、ネガティブインパクトが過大で適切に管理できないものには資金の提供を控えることが求められます。評価室の業務でも、ファイナンスを検討しているプロジェクトや企業が生み出す可能性のあるネガティブなインパクトが適切に低減され、きちんと管理されているか――開発過程での森林伐採を見て愕然とした当時の気持ちを思い出し、しっかりと確認を進めています。
――では最後に、今後の取り組みについての思い、期待をお聞かせください。
長澤:これまで、合計27件のサステナブルインパクト評価を手がけてきました。当初は、社内の啓発活動からスタートしましたが、マネジメントの強いコミットや関係部署との協力・連携を通じて、社内への浸透も進んできたのではないでしょうか。サステナビリティという言葉が新聞に載らない日はないくらい、世の中の動きは早く、私たちも常に情報収集・分析をしながら、お客さまのニーズにあわせた提案を日々行っています。私たちの部内に目を向ければ、さまざまなバックグラウンドを持った頼もしいメンバーが集まってきており、今後も新たなチャレンジに取り組みながら、サステナブルインパクトの推進案件に取り組んでいこうと、話し合っているところです。
朝野:これからのことですよね……サステナビリティについては時に壮大で抽象的な話になってしまうこともあります。だからこそ、私は部署を設立した原点に戻って考えたい、といつも思います。その原点の思いこそ、「サステナブルな社会に向けてインパクトを与える」ということ。その思いを大事にしながら、地に足の着いた活動に今後も携わっていきたいと思います。大事にしたいのは「なぜ評価するの?」という自分への問いかけです。評価することそのものが目的であってはならない、そう考えています。個人としての思い――山林での開発風景を見たあのときの思いを忘れず、社会に役に立てる存在になっていければと思います。
長澤:朝野さんが言ったように、サステナビリティ、インパクトを当行グループの社員一人ひとりが自分ごととして考え、実践していく。それが当たり前のものになるのが理想的な姿だと考えています。それが現実のものになったときには、サステナブルインパクト推進部も評価室もグループ内での専門部署としてのある程度の役割を果たしたことになるのではないかと思います。なお、サステナブルインパクトの最大化にむけて、当行グループの取り組みにとどまらず、様々な金融機関とのネットワークを通じた活動としても展開できればと考えています。
私自身も、持続可能な社会のために自分は何ができるだろうか?バックキャスティングの思考を持ち、アンテナを常に高く立てつつ、新しい発想を持ち続けることが大切だと感じています。今後、サステナビリティへの感度が高いZ世代が社会人になり、そして社会の中心に進む時代がやってくるでしょう。そこでは環境・社会に対するインパクトの視点は、今よりもさらに注目されるようになるはずです。そんな未来の仲間、そしてサステナビリティに関して志高く取り組んでいる評価室のメンバーたち。彼ら彼女らの感覚を最大限に尊重し、活躍を支えていく。それが私たちの世代の役割だと考えています。
「ファイナンスの“評価”を通じて環境や社会全体にインパクトを【Vol.2】」の記事はこちら📌
こちらは、新生銀行グループの新生銀行に関する記事です。
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