見出し画像

中小企業の大廃業時代を前に考える。転廃業・事業承継支援の新たな姿

わが国の経済を支える中小・中堅企業は経営者の高齢化が進む一方、後継者不足という課題にも直面しています。経営環境が厳しさを増す中、事業の継続が喫緊の課題になっているのです。新生銀行グループはそれぞれに異なる企業の悩み、問題に寄り添い、課題解決を支援しています。「新しい事業承継支援」をキーワードに、新生銀行グループならではのサポートを進める二人が語ります。

語るひと:
新生銀行 事業承継金融部
部長      舛井正俊
新生事業承継
代表取締役社長 塚越公志

大廃業時代がやってくる?
日本を支えてきた中小企業の危機

――日本の企業のうち実に99.7%を中小企業が占めています(※)。高度経済成長はもちろん、現在の繁栄した社会を支えてきたのは中小企業ですが、「事業承継」が大きな問題になっています。どのような危機が指摘されているのでしょうか。

舛井:2017年の経済産業省公表資料によると、2025年に70歳を超える中小企業・小規模事業の経営者は約245万人。そのうち、半数の127万人において後継者が決まっていないとされています。このままでは日本の企業の全体で実に1/3が後継者未定のまま、平均引退年齢の70歳以上に突入することになります。その結果、中小企業が続々と廃業することで、約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性が指摘されています「大廃業時代の到来」とメディアが指摘し、国策的にも事業承継が大きなテーマになりました。既に2022年になっていますが、事業承継が大きく進展しているようには思えません。

塚越:中小企業の後継者不足は成熟産業を中心に全国各地で問題となっています。産業の衰退は地域コミュニティの衰退や、手入れ不足からくる自然環境の荒廃にもつながりかねず、サステナビリティの観点からも見逃せません。日本において、中小企業は産業の土台を支える存在として、長らく競争力の源泉になってきました。しかし、経営者(オーナー)が会社に張り付いたままで従業員の給与も上がらず、収益の脆弱性を抱えているケースも見られます。これでは従業員が未来を描きにくくなり、企業の資本効率の向上は望むべくもありません。こうした課題が山積したまま、これといった対策も取られず、長年先送りされ続けてきた結果が、社会問題としていよいよ表面化してきたのだと思います。

舛井:なぜ事業承継がスムーズに進まないのか?その問題を紐解くと、課題を抱える企業が構造不況的な業種であること、それ故に、慢性的な赤字体質や債務過多に陥っているといった問題が見られました。その結果、「継ぎたい」と思われない企業が多くなってしまったのではないか?それが私たちの仮説です。企業の選択肢は「承継」だけではありません。転廃業も視野に入れ、柔軟な支援を考えていく必要があります。

日本の中小企業が直面している課題について説明する舛井さん

グループを横断する知見と機能で
事業承継、転廃業ニーズを支える

――事業承継から転廃業まで視野に入れた幅広な支援が求められる背景がわかりました。経営者にはどのような選択肢が考えられるのでしょうか?

舛井:このチャートは、引退を決断した経営者の選択肢を示したものですが、思考の過程を示しているとも読み取れます。まず、考えられるのが①「事業承継」で、以前は親族内承継が一般的でした。近時は親族や社内で適切な後継者がいない場合はM&Aで第三者に承継することも増えています。しかし、先述の通り、赤字体質だったり将来の見通しが立たなかったりする企業は買い手がつかないため、②「廃業」を考えなければなりません。②は資産超過での廃業なので株主の手元にお金が残りますが、赤字のまま③「望まざる事業継続」をしてしまうと債務超過となり、残せるものがなくなってしまうというケースもあります。決断が早いほど、より良い選択肢があると考えられます。

経営者の出口戦略における選択肢

舛井:そこで、新生銀行グループが不良債権投資、事業再生に取り組んできた経験をもとに、未上場のオーナー企業の事業承継・転廃業ニーズをサポートする目的で創設したのが事業承継金融部です。2015年7月に発足しました。

塚越:経営からの引退、事業終了を検討した経営者に対して、金融機関ならではのコミットメントができないだろうか。資金提供や経営支援を機動的に行い、事業の円滑な承継を支援できないだろうか。そういった思いから、私たちは2020年に新生事業承継を設立しました。承継だったり、転廃業だったり、中小企業の悩みはそれぞれ異なります。それらの企業に寄り添っていくために、新生銀行の事業承継金融部、そして新生事業承継がきめ細やかなソリューションを提供しているのです。

新生事業承継設立までの経緯を振り返る塚越さん

オーナーも、関係者も納得するかたちで
最適な事業承継、転廃業を提案していく

――新生銀行の事業承継金融部、そして新生事業承継が提供するソリューションを整理したものです。企業の課題、要望に対応するソリューションがきめ細かく用意されていますね。

塚越:「株式集約が進まない」 「同業への株式売却に抵抗がある」 「訴訟を抱えているなど、売却が困難な事情がある」といった、個々の複雑な事情を解きほぐし、パッケージではなく個別の解決策を見出していく必要があります。膝を突き合わせ、丁寧にコミュニケーションを取りながら一歩ずつ進んでいくしかないのです。

舛井:ある案件を例に取り、事業承継の支援を説明しましょう。全国に数十店舗を展開するアパレル企業で、創業社長が他界し、親族が事業を承継したというケースです。承継から間もなく経営が急速に悪化。同社はM&Aを模索したものの難航し、私たちに相談をいただきました。そこで私たちが考えた施策は、新生銀行グループと共同投資家で組成した廃業支援ファンドで株式を引き受けるというものでした。赤字店舗は閉店セールを実施し、黒字店舗ではスポンサーを探しましたが見つからず、最終的に従業員に小売会社の株式を譲渡し、小売事業を承継。一方、卸売、企画を担当する会社は切り分け、清算(廃業)することになりました。

本件では赤字店舗の閉鎖に際して再就職支援制度を導入し、従業員の円満な退職、再就職を支援しました。企業それぞれの事情に寄り添い、オーナーも、そして従業員も納得したかたちで縮小型の事業承継ができた事例です。

塚越: 企業オーナーの中には、自社の直面している課題や現状について認識しながらも、その出口を見出せず、ひとりで悩まれておられる方も多くいらっしゃいます。事業承継や転廃業の領域は、法律や会計・税務の高度な専門知識が必要なこともあり、相談相手には各分野の専門家が候補に挙がります。ただ、対外的な影響や関係当事者の心情といったソフト面のケアまで視野に入れ、真摯に対応できる相談先は限られているのが実状です。私たちは、オーナーと同じ視点に立ってあらゆる課題に向き合い、共に考え、解決策を見つけることができる存在でありたいと思いつつ、日々活動しています。

※ 出典:中小企業白書(2020年版)

【編集後記】
日本長期信用銀行(現 新生銀行)に1990年に入行した舛井さん、翌91年に同行に入行した塚越さん。所属する組織は変遷を遂げても、高い専門性と知見でお互いを認めあっている様子。1期違いの間柄ならでは、フランクな空気の中での取材になりました。
                  
取材・文/佐々木正孝 撮影/辰根東醐

「企業それぞれの課題に寄り添い、思いをつなぐ。金融機関ならではの承継・再編サポート」の記事はこちら📌

こちらは、新生銀行グループの新生銀行・新生事業承継に関する記事です。

新生銀行グループの「事業承継支援サービス」「事業廃業支援サービス」について、もっと詳しく知りたい方はこちら!📌(新生銀行グループのサイトへ遷移します。)


この記事が参加している募集