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全国地域金融機関と連携し、医療・介護事業者の持続可能性を高めることで、地方創生を実現

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、さまざまな問題が生じるといわれる「2025年問題」が目前に迫る今、医療や介護といったヘルスケア分野では、事業承継や老朽化した病院の建替えなどさまざまな課題を抱えています。
 
こうした課題を金融面から支援する仕組みのひとつとして、SBI新生銀行と昭和リースは2022年11月に「地方創生ヘルスケアコーポレートローンプログラム」「地方創生ヘルスケアファイナンスプログラム」をそれぞれ立ち上げました。
SBI新生銀行グループのシナジーを発揮しながらサステナビリティにつながるプログラムを牽引する3人に、ヘルスケア事業の取り組みとこれからについて、詳しく話を聞きました。

語るひと:
SBI新生銀行 ヘルスケアファイナンス部
 副部長 大友和典
 統轄次長 上杉真也
昭和リース ヘルスケアビジネス部
 副部長 飯川俊史


数々の手法を組み合わせて医療・介護事業者の「お金の問題」の解決にあたる

――部の創設から10年以上が経つSBI新生銀行ヘルスケアファイナンス部に、「地方創生ヘルスケアコーポレートローンプログラム」が立ち上がった経緯を教えてください。
 
大友:地域で医療・介護を手掛ける事業者さまに対して、これまで以上に積極的にファイナンスを提供するというのが「地方創生ヘルスケアコーポレートローンプログラム」の大きな目的です。
 
「地方創生」という言葉のとおり、地域に根ざした地域金融機関と連携してヘルスケア事業基盤をサポートし、地方創生の取り組みを目指そうということで同プログラムを立ち上げました。
 
実際に全国の地域金融機関に直接足を運び、多くの関係者の方とお話をさせていただきましたが、ヘルスケア関連の資金需要が高まっていることを肌で感じています。プログラム創設から1年を過ぎたところですが、多くのご相談をいただくことができました。

全国から集まる情報を一元化し、専門的な解決方法を多岐にわたり提供できるのが、
SBI新生銀行グループの強みだと語る大友さん

大友:地域金融機関を通じて地域の医療・介護事業者さまと話をすると、それぞれにお悩みを抱えていることがわかりました。「施設の建設コストが高い」「雇いたいけれど人がいない」「経営者が高齢化しているけれど後継者がいない」といった共通の問題のほか、「借り換えをしたいけれどノウハウがない」というお声も多く聞きました。
 
上杉:私は不動産ファイナンス関連部門で、ノンリコースローン(※1)を活用した不動産の流動化(※2)による資金調達に関わってきましたが、プログラムへの取り組みを通じて、地方所在の医療・介護施設についてはそうした手法を使って資金調達をすることがまだ少ないことがわかりました。プログラムは「コーポレートローン」と銘打っていますが、課題解決手段としてノンリコースローンや不動産の流動化も活用できることを地域金融機関の担当者やその顧客である医療・介護事業者さまにご案内すると、「これまで経験が無いが取り組んでみたい」「具体的な物件で検討したい」と興味を持っていただけることが多いです。今はその手法で、地方部の医療・介護事業者さまの資金調達や施設整備をお手伝いできる手応えがあります。

上杉さんはファイナンスを通じた社会貢献に手応えを感じているそう

――飯川さんはリース会社というポジションから、どのようにお客さまを支援されているのでしょうか?
 
飯川:昭和リースでは、建物や設備のリースと割賦、それに診療報酬や介護報酬のファクタリング(※3)で、お客さまの資金課題解決をサポートさせていただいています。
 
リース会社の強みは、親しみやすさですね。「こういうことをやりたいんだけど、できるかな?」「この設備が必要なんだけど…」という具合に、気軽に相談されることもよくあります。グループの窓口のようにご相談いただけるのは、うれしいですね。
 
大友:私がこれまで関わってきた融資案件のなかにも、借入金が多くて「これ以上の追加融資は難しい」という事業者さまからの相談も数多くありました。そういうケースでも、不動産の流動化やファクタリングを活用することで財務状況を改善させ、新たな融資も可能とするソリューションの提供も行ってきました。ヘルスケア事業に対する高い知見に加えて、コーポレートローン、不動産流動化・ファクタリングを組み合わせてヘルスケア事業者さまの課題をファイナンス面からサポートしそれを実践できるこのプログラムは、それぞれの専門分野と強みを発揮することで、ヘルスケア事業者さまの課題解決、経営改善に貢献できていると感じます。

全国の地域金融機関との協働で、ファイナンスによる地方創生を全国に広げたい

――このプログラムは、地域金融機関との連携・協働がポイントだとお聞きしました。具体的にどのように案件が進むのか教えてください。
 
大友:地域金融機関は地域密着で活動されています。医療・介護サービスを提供するヘルスケア事業はそれぞれの地域にとって必要不可欠なものですが、大規模な設備のリプレイスや建物の増改築にはお金がかかりますし、病院・介護施設の建て替えともなれば、さらに多額の資金が必要となってきます。また、一般的なコーポレートローンに比べて貸出期間が長期になることなどから、地域金融機関1行だけではかなり負担が大きくなることもあります。
 
そういったケースでも、私どもと地域金融機関が協働することで、大きな金額にも対応できます。地域金融機関と協調での融資やシンジケート・ローン(※4)を組成することで、事業者さまのニーズに対応することができると考えています。
 
飯川:昭和リースは銀行ではありませんから、メインとなる融資はSBI新生銀行と各地の地域金融機関にお任せします。ですが、リースという本業の機能を活用することで、事業者さまを側面から支えることができます。
 
例えば、毎月の運転資金が不安だとなれば、ファクタリングを提供して、その不安をやわらげる。医療設備や機器のリプレイスにコストがかさむということであれば、リースや割賦を活用する。
つまり、昭和リースの役割としては、全体のプランの隙間を細かなパーツで埋めていくイメージでしょうか。こうした「必要な機能の提供」を続けてきた結果、各地の地域金融機関との連携が進むようになりました。

リースならではのご相談を受け、人間関係を作っていけるのが強みという飯川さん

上杉:ヘルスケア事業は事業者さまごとに、抱えている課題や問題が違います。資金と人手は多くのケースに共通するものですが、地域によって、また事業者さまによって、頭を悩ませる問題は十人十色、十社十色です。
それら、さまざまな課題を解決していくと、グループ全体でノウハウが積み上がっていく。それを関係者全体で共有すれば、より多くの課題に対応できるようになるのではと考えています。
 
大友:私たちも相談いただいた案件に合わせて、また関係者の置かれた状況によって最善の解決策を提案していきます。SBIグループ傘下の地域金融機関に限らず、全国の地域金融機関とのネットワークを通じて全国をカバーしていること、一般的な融資だけでなく不動産流動化やファクタリングをはじめとするさまざまな機能や解決手法を持っていること。これが、我々の大きな強みですね。

なくなっていい病院なんてひとつもない――ファイナンスが社会貢献のためにできること

――介護保険制度施行から四半世紀が過ぎようとしている今、施設や設備の老朽化が目立つようになり、ヘルスケア事業の必要性はますます高まりつつあります。このことを踏まえて、今後の展望はどのように考えていますか?
 
飯川:SBI新生銀行と昭和リースは、社内にヘルスケアを専門とする部署を持っていました。そのため、このプログラムの立ち上げもその後の活動も、スムーズに運んだという面があると思っています。
 
ただ、私たちの場合、事業再建や会社再建に寄った案件が多かったため、なかなか着地が難しいケースもありました。しかし、日本のどの地域にも「なくてもいい病院」なんてありません。
 
ですから、リース、割賦、ファクタリングのほか、リース会社として提供できるソリューションを臨機応変に提供し、事業者さまの課題解決をサポートすることに注力してきました。今は、その活動を続けるだけですね。
 
上杉:私が扱うノンリコースローンの案件の多くは、これまでアセットマネージャーからの相談と依頼を受けて行う、いわば受け身の業務が中心でした。ですが、今後はこちら側が主体となって顧客の課題解決をサポートしていくような能動的な案件組成を増やしていきたいと考えています。
 
地域金融機関と、その背後にいる事業者さまの困り事をくみ取り、「一緒にやりませんか?」と提案・案件化し解決していく。そうすれば、それぞれの地域における医療・介護事業の維持・発展を通じて地域の方々の利便性向上や安心・安全の確保にも貢献できますし、また銀行としても高い収益性が見込め、関係者全員がハッピーになれるはずだと考えています。
 

それぞれの得意分野で社会貢献につながるファイナンスを広げたいと、夢を語る3人

飯川:収益性という要素は大切ですよね。地域でがんばるヘルスケア事業者さまに貢献できるプログラムであっても、必要な収益を安定して確保できない状態では、持続性に不安が残ってしまいますし…。
 
大友:持続可能性、サステナビリティという言葉は今や浸透していますが、これらの言葉を私たちも常に意識していなければなりません。医療や介護はどの地域でも継続的に必要とされるものですが、実際にサービスの提供継続に課題を抱える事業者さまもいますし、一方でサービスを継続して必要としている利用者も多い。それを支える私たちの業務も、強くてしなやかな持続性を確保する必要があります。
そうすれば、社会課題の解決という大きな成果に近づけますし、上杉さんが言った「関係者全員をハッピー」にし、地域の方々に安心をお届けできます。
 
上杉:このプログラムを安定的に継続させ、それを活用することでヘルスケア事業の持続性を保つ。このサイクルを各地の地域金融機関とともに回していけば、全国規模で地方創生の動きを活性化することができるはずです。まだまだ道程は始まったばかりですが、2025年はもう目の前です。私たちも気を引き締めて、プログラムを推進していかなければなりませんね。

【注釈】
※1 ノンリコースローン:特定の事業や資産から生まれるキャッシュフローのみを返済原資とするローン。返済不能に陥った場合でも、ほかの事業や資産に影響が及ばない。
※2 不動産の流動化:事業者が所有する不動産を特別目的会社等に売却し、その資産価値とキャッシュフローを原資として資金調達を行うこと。流動化した不動産はバランスシートから除外されるので、資産効率の改善も図れる。
※3 ファクタリング:売掛金をファクタリング会社に売却する手法。支払日前の売掛金の現金化や、未回収リスクの回避に利用される。
※4 シンジケート・ローン:複数の金融機関が協調融資団(シンジケート団)を組み、同一の条件・同一の契約書で融資する手法。融資を受ける企業側は各金融機関を取りまとめるアレンジャーとの交渉のみで、大きな資金を調達できる。

【編集後記】
「山陰地方でサポートした事例をニュースリリースで見たお客さまから、『うちでもできるだろうか』というお問い合わせが増えてうれしいですよね」と、喜びを見せてくださった3人。ひとつでも多くの病院・介護施設が維持・発展することが地方創生の基盤となり、SBI新生銀行グループと地域金融機関とのシナジー強化にもつながっていくと感じられました。

取材・文:植野徳生 撮影:橋本千尋

こちらは、SBI新生銀行グループのSBI新生銀行と昭和リースに関する記事です。

「地方創生ヘルスケアローンプログラム」についてのプレスリリースはこちら📌(SBI新生銀行のサイトに遷移します)
「地方創生ヘルスケアファイナンスプログラム」についてのプレスリリースはこちら📌(昭和リースのサイトに遷移します)

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