チームの多様性が投資のアイディアに~インパクト投資【Vol.2】
経済的リターンと社会的リターンの両立を目指す「インパクト投資」。【Vol.1】では、邦銀系初のインパクト投資ファンドを生んだ2人の背景や想いを聞きましたが、【Vol.2】ではインパクト投資“チーム”にもフォーカスします。規律ある投資、やりがいや多様な顔ぶれのメンバーについて聞きました。
「ランチタイムに生まれたインパクト投資ファンド~インパクト投資【Vol.1】」の記事はこちら📌
新生銀行グループが
「インパクト投資」を手がける意味
「規律ある投資」こそ、私たちの定義
――2017年、邦銀系として初めてスタートした「インパクト投資ファンド」。投資する上で大切にしていることを聞かせてください。
黄:「規律ある投資」です。他の投資家も同様ですが、もともと新生銀行も組織としてしっかりとした基準を持って投資を考えてきました。人によって判断が異なるものではなく、科学的に、ロジックに基づいて行わなければならないということです。
高塚:私たちファンド運営者は、お預かりした投資資金を活用して投資先の事業をスケールアップさせていくわけですが、銀行系のファンド運営者として、一定の規律にのっとった運用を行います。日本の機関投資家を含むマーケットでインパクト投資のエコシステム(生態系)を作っていこうと考えたとき、規律を踏まえたインパクト投資だからこそ金融界の中で広がっていくと考えています。
黄:社会課題の解決を目指すのがインパクト投資ですが、経済性が伴わなければ「インパクト」とは呼べません。多様な社会課題の解決に向けてお金を投じる多様な事業者がいなければ。私たちを含め、縦横のつながり、ネットワークがすごく大事です。それぞれの人が、それぞれの視点で「社会のために良い金融」を考えていく。この世界観はまさにエコシステムなのです。
高塚:世の中で「社会課題の解決」というと、やはり寄付やフィランソロピー(慈善事業)というイメージがあるのではないでしょうか。「インパクト投資」の中でも、経済性とインパクトをそれぞれどれぐらいの水準で求めていくかはプレイヤーのスタンスによりますが、特に私たちのインパクト投資は、銀行が手がけるものとして経済性と社会性の両立が求められます。「経済を犠牲にして社会の問題を解決する」「経済を回すために社会課題の解決を無視する」といった、どちらかの問題ではありません。新生銀行グループの取り組みとして推進するのであれば、金融機関系投資家として求めるべき経済性の水準と、社会変革を起こし得るインパクト水準の、どちらも取りに行くべきだろうと思います。
――規律ある投資、そして経済性と社会性の両立のために、どのような取り組みをされているのでしょうか。
黄:インパクト面での規律を目に見えるものにするのが、「インパクト測定・マネジメント」。私たちはIMM(Impact Measurement & Management)と呼んでいます。インパクトをメジャーメントとマネジメントする。つまり、「測定し、それを持って運営する」ということです。インパクトには、その事業が創出するインパクトを把握する「事業性評価」と、その事業を生み出す基盤としての組織の有り様を把握しようとする「組織評価」があります。これらを私たちの投資検討プロセスに入れることで、新生銀行グループの判断軸がより明確になってきます。
高塚:私たちの投資候補先・投資先におけるIMMにあたっては、国際的に整理され広く受け入れられた評価フレームワークや手法を活用します。こうしたものは、往々にしてロジカルにできていて、もちろん担当者の主観も入りますが、一定の切り口からインパクトを見るため比較的再現性が高いと言えます。可能な限り安定したフレームワークを活用し分析・判断していくことで、インパクトの見方に「規律」を働かせようとしているのです。また、それらを活用した結果、私たちのファンドのスコープと重ならない事業や会社には、残念ながら投資することができません。当たり前ですが、私たちのファンドではすべての社会課題を解決できるわけではない――規律を持って投資判断することでロットの大きな機関投資家の資金をお預かりでき、より大きく社会に貢献していけるという可能性を生みますが、同時に、投資対象選定においては相応の限界が生じるということでもあります。そこはしっかり自覚しておかなければならないと思っています。
目の前の業務に
自分ごととして取り組む熱きチーム
理想を目指す思い、目の前の仕事がつながる喜び
――インパクト投資チームは「働く人」を中心に据え、子育てや介護などを経ながら「働き続けられる」社会を目指しています。チームそのものには、どんな「働く人」が参画しているのでしょうか。
高塚:社内公募制度でメンバーを募ったところ、多くの方々が手を挙げてくれ、中にはご自身も「出産・育児をしても働き続けるにはどうしたらいいか?」を考えている方も多くいました。女性に限らず、あらゆる状況下にある人々が活躍できるためにはどうしたらいいか? 黄さんと私の想いが走り出す中、共感・共鳴するメンバーが集まってきて、最高の仲間で進めることができています。
3人のお子さんを持つパパがいれば、金融機関のバックオフィス担当から転身して加わってくれたメンバーもいます。一緒に取り組んでいるメンバーを見て、やらされ感はまったくありません。インパクト投資1号ファンドは子育て支援ファンドとしてスタートし、2号ファンドでは投資先に介護関連を加えました。そして今、メンバーの目は、さらに将来取り組んでいくべき社会課題を見ています。これからもどんどん面白い提案が出てくるでしょう。
黄:一緒に働くメンバーとどんな点で共感するか?これは働く上で大きいポイントではないでしょうか。私たちのチームは「経済に目配りしつつ、社会課題をいかに解決するか」という軸で共感・共有しています。あるメンバーは、大学生の頃から渋沢栄一の『論語と算盤』に惹かれ、読み込んでいたそうです。その話題で話し合っていると「経済性と社会性の両立」――まさに、インパクト投資であり、サステナビリティ経営につながるテーマに行き当たりました。同じ共感軸で話し合い、仕事に向かっていけるのは大きな喜びです。
インパクト投資ファンドを立ち上げる際に感じたのが、「新生銀行グループは新しいことにチャレンジできる土壌がある」ということでした。そしてもう一つ、「完璧にしてから動くのではなく、走りながら完璧を目指していく」。これもまた、新生銀行グループに根づいているイズムだと思います。
金融界に広がり、希望が連鎖していけばいい
「日本インパクト投資1号」に込めた思い
――子育て支援ファンド、はたらくFUNDに続く取り組みにも期待がかかります。子育て支援ファンドは、よく見ると「日本インパクト投資1号」が正式名称なんですね。これにはどんな思いがあるのでしょうか。
高塚:そうなんです。私たちが運営するファンドの正式名称は「日本インパクト投資1号」と「日本インパクト投資2号」。これからのインパクト投資は、私たち新生銀行グループだけが取り組むべきものではなく、日本の金融界に広くインパクト投資の取り組みが広がっていってほしい。そんな期待を込めて「日本」とつけています。
黄:志あるメンバーの参画によって、私たちの案件開発力も上がっています。子育て支援ファンドが世に出てから5年。ものすごいスピードで社会は変わり、台頭するスタートアップの姿も変わってきました。若き起業家たちは経営について学び、DX(デジタルトランスフォーメーション)についての知見も豊富です。そして、物的、量的な成長だけではなく、質の成長を重んじている方も多い。人生のさまざまな要素の中に仕事があるという「Work in Life」や、心身が豊かな状態を示す「ウェルビーイング」。起業家たちのキーワードは、私たちインパクト投資チームの価値観とも合致します。ぜひ応援していきたいですね。
――では最後に、おふたりが考える「未来のインパクト投資の姿」についてお聞かせください。
高塚:私が黄さんと語り合い、共感しているのは、インパクト投資が「子どもにつないでいきたい仕事」「未来への投資」だということです。コロナ禍でテレワークも多くなり、時に私の仕事について子どもと話す機会もあります。印象的だったのは、「お母さんの仕事はがんばっている会社や経営者を応援することなの?それって楽しそうだよね!」という子どもの反応でした。子どもたちはSDGsを肌で感じ、授業や体験を通して日々学んでいます。インパクト投資の良さも、肌感覚で理解できるのでしょう。がんばっている会社、起業家をどんどん応援する「黒子」の仕事ですが、子どもたちの将来を創ろうとするものであり、その考え方や過程を共感できる仕事であると感じています。
黄:日本の金融機関によるインパクト投資のスタンダードを世に出そうとしているメンバーには、刺激を受けてばかりです。私たちのチームは、常に自分をアップデートし続けていく、成長していくワクワク感に満ちています。だけど、変化を志向し続けるだけではない。その中に『不変のもの』も見えます。『論語と算盤』や「三方良し」という価値観があるのは日本だけではありません。私の祖国・中国にも「経済性と社会性の両立」は普遍的なテーマとして語られてきました。新しいことにどんどんチャレンジして自分を変える。それをメソッド化する中に、普遍的なものとのリンクが見えてきます。インパクト投資を追求する中で、チームも、そして私自身も成長を続けていければと思っています。
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