「共生」の明日につながるファンド 待っている障がい者のためにできること【Vol.2】
誰もが分け隔てられることなく共生できる社会を目指し、新生銀行グループの昭和リースが取り組んだ、日中サービス支援型の障がい者グループホームの開発・運営を目的とするファンドの組成。ファンドの対象になる「障がい者向けグループホーム」の実情について聞いた【Vol.1】に続いて、金融機関ならではの事情などについて立ち上げメンバーが語ります。希望を実現するために乗り越えた壁とは…?
「共生」の明日につながるファンド 待っている障がい者のためにできること【Vol.1】の記事はこちら📌
障がい者の実情把握から見えてきた
ファンドの意義
ーーファンドの組成に向けて実際に取り組む上では、何か壁はあったのでしょうか?
國井:障がい者の実状、現状の総括が今なお容易ではないということです。前回お話したように、総数は把握されているものの、軽度から重度まで障害支援区分ごとの人数はわかりません。自治体によって統計の仕様や内容が異なっていますし、整備計画の時間軸もさまざまです。整合を取り、業界を俯瞰するのは一苦労でした。しかし、リサーチの段階でわかったこともありました。グループホームの整備、拡充は政策の一環として推進されています。必然的に、それぞれの自治体も整備を急いでいるということが分かったのです。
稲垣:障がいは身体的、精神的、知的と3つに分類されています。身体的障がいでも細かく言うなら視覚障がい、聴覚障がいといった分類があり、それぞれに取り巻く環境や関係者が異なっています。ところが、グループホームは身体的、精神的、知的障がいといった細かい区分はなく入居します。これが障がい者を取り巻く事業環境の実態把握の難しさ、全体を総覧する統計データの不足といった事態につながってくるのです。
厚生労働省のデータによれば、重度者向けの「日中サービス支援型」グループホームは2019年から2021年にかけて施設数が3.8倍、利用者数は4.3倍に増えています。ところが、本格的に取り組もうと考えた社会福祉法人の前には、資金調達という壁が立ちはだかります。ここに、私たちのファンドの意義が見えてきました。
その一方で、お金儲けに走り、グループホームのサービスを疎かにするような事業者が出てくることも懸念されます。だからこそ、金融機関が選定し、優良な運営会社に資金を投下していく仕組みを作りたいと考えています。そこに、中立的な金融機関が関わる意味が出てくるのです。
「リアルなものがないとお金を出せない」
金融機関ならではの壁を乗り越えて進む
國井:ファンドの組成にあたって最も苦労したのは、参加していただける金融機関を募ることでした。このかたちに落ち着くまで回った金融機関は数十行以上。走り出してから1年半が経っていました。ここまで難儀だったのは、金融業界ならではの事情、ある意味での「限界」があったからです。
「もの(担保)がないとお金を出せない」というのが、金融機関の基本的な考えです。ファンドのための資金を募る私たちは、担保になる不動産がない中で企画を説明していくしかありません。当然ながら、「どうやったらお金を出せるのか」という金融機関がほとんどです。その中で、「面白い、前向きに検討しましょう」と乗ってくれたのが中小企業専門の金融機関である株式会社商工組合中央金庫(以後、商工中金)様です。
ファンドによる運営が始まれば、サービスを受ける側も資金を提供する側も、双方にとって好循環が回っていきます。その結果、参画を考えてくれる方も増えてくるでしょう。だからこそ、商工中金様が踏み出してくれた第一歩には、大きな意味があったのです。
最終回となる【Vol.3】では、このファンド組成プロジェクトを通して感じているやり甲斐や今後の展望についてお聞きします。お楽しみに!
「共生」の明日につながるファンド 待っている障がい者のためにできること【Vol.3】の記事はこちら📌
こちらの記事は、新生銀行グループの昭和リースに関する記事です。
昭和リースの「障がい者向けグループホーム」についてのプレスリリースはこちら(昭和リースのサイトへ遷移します。)