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金融との協業で実現する「住宅×脱炭素」のアプローチとは?

2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、CO2の排出減少につながる省エネの取り組みが重要性を増しています。脱炭素社会を実現するには、企業における脱炭素経営に加えて、日本のCO2排出量の14.7%(2021年度※)を占める住まい(家庭)部門の対策が欠かせません。

※出典:環境省 脱炭素社会移行推進室, 2021年度温室効果ガス排出量(確定値)概要 

そこで政府は、住まいで使用するエネルギーを減らす(省エネ)と同時に、みずからエネルギーを作り出すこと(創エネ)により、エネルギー収支を「ゼロ以下」にする住宅として「ZEH(ゼッチ)」の普及を推進しています。このキーワードにいち早く注目し、同業他社などとの協業によるファンド組成に取り組んだ、昭和リースの3人に話を聞きました。

語るひと:
昭和リース パートナービジネス部門 事業開発部
部長 小林栄二
次長補 國井洋平
上席主任 田村幸太
※部署・役職はインタビュー当時

時代に合ったキーワードをもとに「企画ありき」で独自案件を推進できるのが強み

――新規事業立ち上げのきっかけとなった「ZEH」について教えてください。
 
小林:ZEH(ゼッチ)とはNet Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語で、高断熱化と高性能化で省エネ・創エネを可能にした住宅のことです。住まいから出るCO2をゼロにすることはできませんが、使うエネルギーよりも作るエネルギーが多ければエネルギー消費をゼロにすることができます。経済産業省が「ZEHロードマップ検討委員会」を設置した2015年には新築戸建が対象でしたが、2019年には集合住宅も対象として定義が改訂されました。政府は、2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準を満たす省エネルギー性能の確保を目指す政策目標を設定しています。近い将来、「これから建てる住宅、集合住宅はZEHが当たり前」の時代が来ると考えています。

先が見えない新規事業の開発には、合理的な選択とパワーワードが必要と話す小林さん

國井:ZEH化は、カーボンニュートラルにつながる一方でコストアップとなるため、市場の注目度はまだ低いような気がしています。ただ、2035年までに新車販売を100%電動車にするという政府の方針に沿って、電気自動車へのシフトが現状でも進んでいるように、ZEHがスタンダードになる未来はすでに目の前まで来ているのですよ。 

――今回、そのZEHにいち早く注目して、認証を受けたマンションの開発を目的としたファンドの組成に取り組んだと聞いています。きっかけを教えてください。 

國井:昭和リースのファンドアレンジは、従来の不動産を中心としたアレンジでなく「企画ありき」である点に特徴があります。コンテンツのひとつとして不動産があるイメージですね。私たちが企画から主導し、ゼロベースでエッジの効いた物件を開発し、ファンド組成につなげています。 

※ファンドアレンジとは、ゼネコンや施設運営会社と連携し、ファンドを組成すること(企画、ファイナンスアレンジ、エクイティ出資)

そのために、私たちはいつも世の中の流れにアンテナを張ってキーワードを探しています。金融機関としてファンドやファイナンスで支援する以上、刹那的な流行ではなく、社会的意義があるキーワードであることも重要だと、ますます感じるようになりましたね。障がいを持つ人もそうでない人も分け隔てなく共生できる未来を目指して組成した、障がい者向けグループホームの開発・運営のためのファンドはその一例です。
 
今回の「ZEH」は、障がい者グループホームでご縁ができた積水ハウス株式会社様を通して知ったキーワードです。障がい者グループホーム同様、非常に将来性があり、時代に合ったパワーワードだと感じて取り組むことにしました。

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小林:事業開発部は、新規事業への取り組みに本腰を入れるべく2021年に新設された部署で、ZEHの取り組みは私と國井さんの2人でスタートしました。人手が足りず困っていたとき、融資にあたって担保物件の評価を行うアンダーライティングや、投資先企業の価値やリスクを調査するデューデリジェンスの担当として入社してくれたのが田村さんです。
 
田村:前々職でアセットマネージャーをしていたときに國井さんと知り合い、リファラル採用(社員の紹介や推薦によって行う採用)でジョインしました。入り口としてZEHというホットな仕事があると聞いてワクワクしましたし、即断でしたね(笑)。
私は不動産鑑定士の資格も持っているので、企画に対して裏づけの資料やデータを集めて分析をし、投資の適格性を判断するのが今の役割です。

不動産のプロとして新たな価値を生み出すおもしろさを感じていると話す田村さん

スキームの最後の1ピースを埋めたグループシナジー

――良いチームができたところで、どのように案件を進めていったのでしょうか?
 
小林:一から始めた本ZEHファンド組成の開発には、金融、不動産、ゼネコンとさまざまな関係者が存在します。まずは、計画の実行に必要なパートナーを選定し、枠組みを一つひとつ埋めていかなくてはなりません。それぞれの業務分担、枠組み、パートナーとの合意に漕ぎつけるまでに1年近くかかりました。
 
國井:スキーム自体は非常にポピュラーなものですが、関係者全員がWin-Winになる形を模索するのに時間がかかるのです。パズルのピースを埋めていくような感じですね。業界が違うと言語が違うので、その仲介も私たちの重要な仕事です。
 
ただ、この手間をいとわず、テーラーメイドのファンドアレンジができるのが我々の付加価値であり、金融業界では企画の段階からアプローチできる競合先がほかにいない理由だと思っています。いろいろな方と会って話すのが大好きな私にとっては、この仕事の醍醐味でもありますね。

國井さん(左)は積極的にさまざまな関係者と直接会って話し、
横のつながりを大切にしているそう

田村:いずれ他社から模倣されるようになるかもしれませんが、企画力、統率力、金融リテラシーの3つがそろって初めてできるアプローチだと思うので、簡単ではないはずです。他社にいた立場からいうと、不動産ありきだと企画が二の次になりますし、企画ありきだと不動産とのつながりが薄かったり、資金集めが不得意だったりするものなのですよ。
その点、國井さんは知見も人とのつながりも豊富で、バランス良くパズルのピースの候補を集められる稀有な人材だと思います。
 
――最も埋めるのが大変なピースは何でしたか?
 
國井:運用ファンドですね。ZEHでいうと、我々が直接関わるのは開発ファンドで、運用するファンドは別の会社に担当してもらう必要がありました。この運用ファンドをやってくれる会社がなかなか決まらず苦労しましたね。
最終的には、昭和リースがSBIグループに入ったタイミングで、同じくSBIグループである東西アセット・マネジメント株式会社が担ってくれることになり、非常に良い形でパズルを完成させることができました。グループシナジーが活きましたね。

社会課題の実現につながるアイデアで、イノベーションを起こしたい

――今後の展開について、構想を聞かせてください。
 
小林:今話題のZEHがきっかけとなり、ファンドが100億円単位まで伸びていますので、まずはそれを拡大することが第一ですね。併せて、田村さんが中心となって、マーケット規模が非常に大きい次の新規ファンド構想であるZEB(Net Zero Energy Building=ネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略)のような、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みに関わる環境対応型の新規ファンドの立ち上げも検討しています。
 
田村:次にチャレンジしたいと思っているZEBとは、いわばZEHのビル版ですね。ビルは住宅と比べて新築は少なく、既存のものが大半なので、ZEBの機能を持たせたリノベーションが可能かどうかを検討している段階です。金融業界においてZEB開発ファンドの組成に取り組んでいる競合先は今のところはほかにありませんから、今回のZEHの知見を活かして、なんとかZEBファンドを組成したいです。
 
國井:個人的には、金融機関とお金を出し合って企画から事業を立ち上げた今回の経験から、「昭和リースは、機関投資家を取りまとめていくような会社になれるのじゃないか」という思いが強くなりました。せっかくSBIグループになったわけですから、SBIグループの強みを活かした大きなチャレンジをしたいですね。
 また、ZEHの横展開として、これまで連携してきた地方銀行と一緒に、地方創生にもチャレンジしたいと思っています。


このチームだからこそ軌道に乗った案件だと話す3人。志はさらに高くあるよう

小林:企画ありきのチームだけにいろいろな企画が今も出ていますが、どれもSBI新生銀行グループの方針に沿った、事業を通じて取り組むべき課題を抽出していることに変わりはありません。今後もそこはぶれずに、社会課題の解決につながる有意義な企画をどんどん実現化させていくつもりです。
 
これからZEHやZEBの普及が進めば、そこで住むこと、働くことによってサステナビリティに貢献できることが大きな価値になり、ZEHやZEBの社会的な評価もさらに上がっていくでしょう。我々の仕掛けがそうした機運の醸成につながることを信じて、皆さんの期待値を上回るイノベーションを起こしていきたいですね。

【編集後記】
「昭和リースは元々ドブ板営業で、地道にやり遂げる社風がある」と話してくれた小林さん。その精神は現在の事業開発部にも脈々と受け継がれ、強いチーム力でZEHというパワーワードとともに新しい価値を生み出しました。事業を通じた社会のサステナビリティ課題の解決を目指すSBIグループの、幅広い魅力が感じられました。

執筆/藤巻史 撮影/橋本千尋

こちらの記事は、SBI新生銀行グループの昭和リースに関する記事です。

昭和リースの「ZEH」についてのプレスリリースはこちら(昭和リースのサイトへ遷移します。)

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