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性の多様性を理解する ~誰もが自分らしく活躍できる職場を目指して~

一人ひとりの特性を認め合い、違いを活かすことで社会や組織にイノベーションを起こすダイバーシティ(多様性)の浸透とともに、LGBTQ+の方が自分らしく働くことができる社会を目指そうという動きが活発化しています。
 
SBI新生銀行グループでは、ダイバーシティ推進の一環としてLGBTQ+に関する取り組みを継続的に行ってきました。2022年11月には、任意団体「work with Pride」による職場でのLGBTQ+に関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」において、最高位のゴールドを獲得しています。
 
今回は、グループ人事部内のダイバーシティ推進室でLGBTQ+のチームを組む土田さん、天明さん、廣石さんに、取り組みの「これまでとこれから」について聞きました。

語るひと:
SBI新生銀行 グループ人事部 ダイバーシティ推進室
統轄次長 土田倫匡
部長代理 天明純一
部長代理 廣石咲希
※部署・役職はインタビュー当時

LGBTQ+への取り組みをすすめ、社内のダイバーシティ推進の取り組みを拡大する

――ダイバーシティ推進室では、いつ頃からLGBTQ+への取り組みを開始したのですか

土田:2021年4月、私も所属しているグループ人事部の人事戦略担当のメンバーがダイバーシティ推進室を兼務したことによりメンバーが増加し、従来の取り組みを拡大していこうという機運が高まりました。そのときに挙がった取り組み事項のひとつが、LGBTQ+に関する取り組みだったと記憶しています。

組織として行えるLGBTQ+の施策について模索したことを振り返る土田さん

 天明:3~4年前のダイバーシティ推進室は、もっぱら「女性活躍」に重きを置いていて、LGBTQ+の施策に関しては手つかずでした。やったほうがいいとは思いながらも、やるべきことややり方が見えづらく、後回しになっていたような印象です。

ほかの金融機関での取り組みについても情報収集したと話す天明さん

廣石:私がダイバーシティ推進室を兼務することになったのも、社内の女性活躍推進委員会からの声がかかったのがきっかけでした。「ダイバーシティ推進」の言葉に含まれるのが女性の活躍推進だけではないのは当然ですが、LGBTQ+当事者のニーズが見えづらく、組織として施策の方向性を定めづらい面はありました。ただ、LGBTQ+の取り組みを始めようと決まったときは、誰もが自分らしく働くことができる環境づくりのために、また新しいアプローチができると感じましたね。

天明:当初は、パーソナルな問題であるLGBTQ+に対して、組織としてサポートをすべきなのだろうかという疑問がありました。ほかの金融機関の施策を聞いても、効果が想像しにくかったですし…。

土田:私は、LGBTQ+当事者と接する機会が過去になかったので、組織としてどのような配慮があることが望ましいことなのか、それによって本当に喜んでもらえるのか、とても悩みましたね。

廣石:私は、プライベートでLGBTQ+の方と関わることもあったので、LGBTQ+の方がいるという状態を当たり前と感じてきました。ただ、今回はLGBTQ+当事者であるなしにかかわらず、そもそもさまざまなバックグラウンドや考え方を持つ社員の皆さんへの取り組みということもあり、どのようなメッセージを発信し、どのような施策を進めていくべきかということについては悩みました。

LGBTQ+当事者を画一的に捉えず柔軟性のある施策を進めたいと話す廣石さん

土田:それぞれ異なるバックグラウンドや考えを持つ3人がチームとして集まり、手探りでのスタートでしたが、共通して描いていた最終ゴールは、ダイバーシティ推進の根幹である「誰もが自分らしく活躍できる職場環境」の実現です。まずはそのために何ができるか、「PRIDE指標」やLGBTQ+の支援団体の取り組みなどを参考に、SBI新生銀行グループのカルチャーとマッチしそうな施策を選んでいきました。

天明:最初に実施したのが、社内でLGBTQ+の理解を深めてもらうための研修です。性的指向や性自認にかかわらず誇りを持って生きられる社会を目指す「東京レインボープライド」の共同代表理事でもある杉山文野様に講師を依頼して、杉山様のこれまでの人生や経験をお話しいただきました。

研修を経て、組織としてLGBTQ+の施策に取り組む意義を実感

――研修を実施してみて、社内の反応はいかがでしたか?

廣石:初回は年齢、性別、役職等に拘らず全従業員向けに実施しました。終了後のアンケートでは非常に高い評価をいただいたことが印象に残っています。

土田:このような調子で少しずつ従業員の意識が高まっていけばいいなと思いましたよね。

天明:「LGBTQ+当事者の悩みを直接聞いたのは初めてで、日常で起こり得る障壁や困難について考えさせられた」「LGBTQ+当事者を身近に感じた」といった、前向きな感想が多かったですね。一方、「知識も得たし、LGBTQ+の存在も認識できたけど、いざ自分がカミングアウトされたら対応できる自信がない」「本人が望むサポートができるだろうか」といった声もあり、それもまた正直な感想だなと思いました。

――皆さん自身は、研修前後で意識の変化はありましたか?

研修でリアルな経験談を聞き、大きな気づきになったと話す3人

天明:杉山様のお話でとても印象的だったのは、かつてフェンシング日本代表でもあった杉山様がフェンシングを選んだのは、性別問わず同じユニフォームで活動できるからという話です。私たちが想像している以上に、本人が日々の暮らしの中で、思い悩んだり、困難に感じたりすることが多いと気づかされました。普段の生活だけではなかなかそういったことに気づきにくい部分があると知って、会社として取り組む意義を感じましたね。本人がストレスを感じにくい、ありのままでいられる職場環境を整えることが、私たちグループ人事部ができることだと考えるようになりました。

土田:表面的な知識ではなく、リアルなライフヒストリーを聞けたという点で、杉山様の研修は、私にとっても大きな転換点でしたね。以前は、助けになりたい、サポートしなければという思いが強かったけれども、支援や援助を強く求めているというよりも、当たり前の存在として接してくれることがうれしい、と杉山様が仰っていました。LGBTQ+当事者がいることが当たり前という環境にするために、LGBTQ+について知ってもらう、理解してもらう施策が必要と改めて感じました。

廣石:知識として学ぶのと、誰かのリアルな経験を追体験するのとでは大きな違いがありますよね。LGBTQ+当事者の経験は、直接追体験をする機会がなかなかないと思います。だから、いざ目の当たりにすると慌ててしまうのだと思います。
そこで、単に知識を入れるのではなく、生の声を聞くことができる機会を提供することが大切
だと感じ、22年度も同じ団体の副代表理事を務める堂本直樹様に講師を依頼しました。堂本様は、大手企業に勤めながら東京レインボープライドでも活動をされている方で、会社という組織の中で生きるLGBTQ+当事者の思いを知る良い機会になったと思います。

カミングアウトしたければいつでもできるし、しなくてもいい。全ての人が自分らしく共生できる環境を作りたい

――研修以降の取り組みについても教えて下さい。

土田:LGBTQ+の理解者・支援者であることを表明するアライ(ALLY)の社内アカウントのアイコンを、廣石さん主導で作成しました。アライのアイコンを使っている人を見つけると、やっぱりうれしいですね。

廣石:アライの表明はステッカーなどの物理的なグッズを作るのが一般的ですが、コロナ禍でグッズを配布しても目にする機会があまりありません。そこで、デザインが得意な社員に依頼して、オンライン会議などで目に留まるアイコンとなるようデザインしてもらいました。

LGBTQ+の象徴であるレインボーを取り入れたアライのアイコン

土田:あとは、天明さんが各種人事制度の拡充に取り組んでくれました。育児・介護に関する諸制度や特別休暇制度、社宅制度などの人事制度の対象を同性パートナーにも拡大しています。

天明:休暇の取得などは、LGBTQ+当事者であることを上長やグループ人事部に言う必要はありませんし、証明書もいりません。金銭的な手当が絡むものは何らかの証明が必要ですが、基本的にはすべての人が同じように制度を使えるようにしたいという気持ちを持っています。

――ありがとうございました。最後に、今後の展望を聞かせてください。

3人それぞれがキャラクターを活かし、SBI新生銀行グループらしい取り組みを広げています

廣石:女性活躍の支援が「女性は弱く、困っている」という前提のもとで行われがちなように、LGBTQ+の当事者に対しても「偏見があってカミングアウトできず困っている」といった画一的な見方があります。
でも、一人ひとり違う人間で、求めていることも一人ひとり違うと思うのです。カミングアウトの有無に関係なく、LGBTQ+当事者がいることを当たり前とした環境を会社として整えて、個人としてもそれを前提とした態度をもっておくことが必要だと感じています。考えや方法をこちらが押しつけたり決めつけたりするのではなく、こういう方法もあるし、ああいうやり方もあるので、あなたにとって心地よい選択をしてください、といったように本人が望む選択肢が用意できるように、今後の施策の進め方についても双方向のコミュニケーションを模索していきたいです。

天明:今後の研修は、相談窓口の人事担当者向け、管理職向けといったように研修対象者をもう少し絞り込んで、より実践的で踏み込んだ内容にしてみてもよいと思っています。LGBTQ+当事者の存在を身近に感じ、自分にできることをしようと考える人が増えるといいですね。

土田:私たちは、カミングアウトは「しなければならないもの/した方が良いもの」とは考えていません。したいと思ったらいつでもできる、しなくても自分らしく働くことができる、そんな環境をつくることが大事であると考えています。
こうした環境は、SBI新生銀行グループのカルチャーが醸成されることによって、5年、10年かけて徐々に構築されていくものでしょう。カルチャー醸成に向けて、これからも取り組みを継続していくつもりです。

【編集後記】
「私たち、考え方はバラバラなんですよ」と言いつつ、それぞれの思いを率直に話し合ったことがわかるやりとりに、チームのバランスの良さがうかがえました。一人ひとりの思いを尊重し、誰もが働きやすく、生きやすい環境づくりはこれからも充実していきそうです。

執筆/藤巻史 撮影/橋本千尋

こちらは、SBI新生銀行グループに関する記事です。

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