当行初のスタートアップ企業へのポジティブ・インパクト・ファイナンスが成立!
「スタートアップ企業」とは、革新的な技術や独自性の高いアイディアでイノベーションを生み出す新興企業のこと。スタートアップ企業の中には、社会課題解決につながる画期的なソリューションの創出に取り組む企業が少なくありません。一方、アイディアがあっても資金が足りず、成長の歩みを止めてしまう企業も多いといいます。
中期経営計画に「顧客中心主義の徹底による顧客基盤の拡大」を掲げるSBI新生銀行では、そうした新興企業の創業直後、あるいは上場直前の段階から接点を持ち、グループ全体で長期的な支援につなげる方針を示してきました。
当行によるスタートアップ企業へのポジティブ・インパクト・ファイナンスの融資は初。SBIグループ一体となりエクイティ・デット両面からスタートアップ企業の成長を支援する体制のなか、社会課題に取り組むスタートアップ企業へのファイナンスに取り組む意義と、ベンチャービジネス部ならではの仕事の手触り感について、プロジェクトを成功に導いた竹内良祐さんと桝原啓吾さんに詳しく聞きました。
銀行と企業の長期的な関係づくりに貢献
――まずは、ベンチャービジネス部の概要について教えていただけますか?
竹内:ベンチャービジネス部はいわゆるスタートアップ企業といわれる新興企業に向けて、ファイナンス面(資金面)での支援をメインとし、その他、グループの金融サービス・機能の提供や、お客さま同士を結び付けるビジネスマッチングなど、さまざまな角度から支援を行っている部署です。スタートアップ企業をカバーするRM(リレーションシップマネージャー)部隊として、2021年4月にグループ法人営業企画部(当時)の内室から部に昇格しました。
エクイティやデットをはじめ、スタートアップ企業の成長ステージによって、必要とされるファイナンスや支援の形は異なりますが、SBIグループの持つ幅広い機能をもって支援することで、創業期からIPO後においてもお客さまの成長に並走していくことができる、お客さまとの長期的な関係性が築けると考えています。
――お2人は、ベンチャービジネス部をどんな部署だと感じていますか?
竹内:私は入行から約11年が経ちますが、これまで関わってきた中堅企業や大企業と比べて、新興企業の場合、こちらが行ったファイナンスの成果や影響が、お客さまの事業活動に如実に表れます。お客さまに与えるインパクトがとても大きい分、自身がそのビジネスや成長に一石投じられたという実感や、お客さまを通じて自身が社会に貢献している実感を得られるのがおもしろいですね。その反面、お客さまに対する責任もより大きくなるので、非常にエキサイティングな部署だと感じています。
桝原:私は2023年4月入行で、初めての配属先がベンチャービジネス部です。実は、入行式で配属が発表されたときは部署の存在を知らなくて…。式が終わってから、急いで調べました(笑)。
今回初めて案件を担当したことで、社会的価値の高いビジネスを展開しているスタートアップ企業の魅力や、その成長をファイナンス面から支援することのおもしろさを知り、非常にやりがいを感じられる部署だと実感しました。
WHILL社の熱意と製品にふれ、支援したい気持ちが強くなった
――では、今回の案件についてお伺いします。ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行先である「WHILL(ウィル)株式会社(以下WHILL社)」との出会いから教えていただけますか?
竹内:2014年頃の最初の接触以後、コロナ禍も経てコンタクトを継続していたところ、SBIグループ内のSBI証券を介して改めてWHILL社から資金調達のお話をいただきました。また、WHILL社は、SBIインベストメントが運営するファンド (SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合)等の投資先でもあり、グループ一体となったお客さまへの支援にもなることから、今回の融資検討が始まったという流れです。桝原さんは入行後、初めて担当するのがこの案件で、苦労しながらマーケット分析を担当してくれました。
桝原:WHILL社のモビリティサービスは、「あらゆる人のお出掛け先での移動を快適にすること」を目的としています。プロダクトはいわゆる電動車椅子に分類されますが、国内では電動車椅子市場が醸成されておらず、量産体制に入っているメーカーもWHILL社以外にありません。
そのため、マーケット分析の際は競合比較ができず、苦労しましたね。最終的に外国の電動車椅子市場を参考に、業界の特性や動向、電動車椅子で重視すべきポイントなどを調査しました。
市場には実質的なライバルがいないため、将来的にWHILL社が大きく成長しそうだなと思う一方、製品の優位性や社会的な価値をどう評価するのかが難しいと感じました。
竹内:私も、ファーストインプレッションは桝原さんと同じです。実質的なライバルがいないといっても、安価な製品ではないので、果たしてどれだけの人が買ってくれるのだろうかと思いました。
でも、WHILL社で製品を直接見て、率直に「かっこいい」と感じました。実際に試乗もさせていただき、当初の考えがガラッと変わりましたね。従来の電動車椅子のイメージを覆すデザインもすばらしいし、何よりも機能性が抜群にいいんですよ。
桝原:シンプルな操作で、びっくりするほど滑らかに動くんですよね。身体的な障害の有無にかかわらず、誰もが乗りたくなる製品だと思います。誰かが直面している課題に着目し、事業を起こしているからこその社会貢献度の高さと、WHILL社の事業に対する熱意にも心動かされました。
竹内:WHILL社の製品は、優れたデザインや先端技術を駆使した機能に加え、長距離の歩行に困難や不安を抱える方や高齢者でも簡単に操作することができ、安心安全な移動を実現しています。実際、電動車椅子のレンタルのほか、空港や病院等の大型施設内での電動車椅子の自動運転による移動サービスを提供しているんですよ。そして、電動車椅子を誰もが快適に利用する近距離モビリティへと進化させるべく、WHILL社は電動車椅子の認知度向上や、移動インフラの構築などにも取り組んでいます。我々は、社内で独立性を確保したサステナブルインパクト評価室がそういったポジティブなインパクトを生み出す事業活動やネガティブインパクトの適切な緩和・管理の取り組みを評価したうえで、今回ポジティブ・インパクト・ファイナンスとして融資実行をするに至りました。
社会的意義のある会社に貢献した誇りを胸に、より多くの支援を実現したい
――当行初のスタートアップ企業へのポジティブ・インパクト・ファイナンスとなりましたが、振り返ってみていかがですか?
竹内:冒頭で少しふれましたが、大手企業や中堅企業へのファイナンスは動かす金額が大きくやりがいがある半面、自分が関わったお金がどのように使われ、どのように消費者に還元されていくのかが見えにくいところがありました。スタートアップ企業へのファイナンスは、金額こそ小さいものの、社会に役立つ仕事をしている会社の成長や存続に直結していることがはっきりとわかります。
人のためになる製品が世の中に広まっていくお手伝いができたなら、こんなにうれしいことはありません。
桝原:社会貢献度が高い企業の成長支援をしたことで、自分の仕事にも大きな価値を感じることができました。WHILL社の製品はJapan Mobility Show 2023でも話題になり、街中で目にする機会も増えています。WHILL社の製品を見つけると自分のことのようにうれしいですし、たくさんの方が移動を自由に楽しむ世界が広がっていけば良いなと思いながら見守っています。
――ありがとうございました。最後に、部署と個人の展望をお聞かせください。
桝原:配属から約半年が経ち、当部の取り組みについて少しずつ理解が深まってきたように感じています。
直近の目標は、より深くスタートアップ企業を理解するためにたくさんの経営者にお会いして話を聞くことです。社会にインパクトを与えるポテンシャルを秘めたスタートアップ企業にひとつでも多く関わり、その成長を支援していきたいと思います。
竹内:ベンチャーデットやスタートアップへのファイナンスの現場で、SBI新生銀行の名前が挙がる回数を増やすべく、多くの企業とのつながりを構築していきたいと思います。今回のように、グループ全体で一体感のある支援を増やしていきたいですね。
参考:WHILL 株式会社向け証書貸付に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス評価レポート
https://www.sbishinseibank.co.jp/institutional/sustainable_finance/pdf/ppif230929.pdf
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