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未来へツナグ、エス・ピーパック社の事業承継とサステナビリティ(Vol.2)

創業オーナーから新生事業承継へ株式譲渡を行い、事業承継を果たした株式会社エス・ピーパック。主にアパレル企業のお客さま向けにショッピングバッグ(ショッパー)の企画・提案を行っている同社が、これまで推進してきたサステナビリティへの取り組みを、新しい組織づくりの中でどのように継続・発展させていくのかが今後の課題です。
 
これからの会社の舵取りを担うお二人に、事業承継とサステナビリティへの取り組みについてお話を伺いました。

語るひと(敬称略):
株式会社エス・ピーパック
代表取締役CEO 福田隆憲

新生事業承継株式会社
営業推進役 兼 エス・ピーパック 社外取締役 松尾裕子


経営陣としてサステナブルな視点を持って組織に参加する

──お二方とも、外部から新たな経営陣として参加されたわけですが、実際にエス・ピーパックの組織の内側に入っての印象はいかがでしょうか?
 
福田さん(以下、敬称略):
近年、レジ袋の有料化とコロナ禍で、袋・パッケージ業界関連市場全体が厳しい状態にさらされました。当然、エス・ピーパックでもその影響を受け、売上はピークアウトしました。ですが、コロナの影響が薄れ、さまざまな業界でリアル店舗に人が戻り始めたことや紙への回帰などもあり、再テイクオフが図れる状態になってきた。そのタイミングでの事業承継でしたから、私自身は好環境の中で引き継がせていただけたと思っています。
 
実際にエス・ピーパックに入って社員の皆さんと話をしていると、皆さんが抱いているこの会社と仕事に対する愛情や熱意というものが、ものすごく伝わってくるんです。80人程の規模の会社ですから、社員同士の信頼関係というものも強く感じることができます。
 
組織面でいえば、感嘆したのは前オーナーの経営力の確かさです。人事制度や評価基準など、組織としての土台が実はかなり出来上がっている。平たく言えば「良い会社だな」という印象でした。同時に、「こういうすばらしい会社は、しっかり次世代につなげていかねば」という気持ちを強くしました。

新たな組織の中、サステナブルな視線に立って陣頭指揮をとる福田さん

松尾さん(以下、敬称略):
私は株主である新生事業承継から派遣される社外取締役としての立場で、会社の業績など計数的指標を含め、全体的な動向を管理・分析し、必要な支援策を打ち出す役割を担っています。非常勤ということで、オフィスに常駐しているわけではないので、現場で今何が起こっているのか、ともすると疎くなりがちです。
 
計数的な分析に基づいて改善策を打ち立てると言っても、真に解決すべき課題は何か、その原因はどこにあるのかを見定める必要があり、そのためには数字に表れない現場の声や実態が重要な手がかりとなります。また具体策を実行するためには、実務に携わる社員の理解や協力が欠かせません。
 
例えば、現場のコミュニケーション状況や社員の関心事や問題意識なども、知っておきたいことのひとつです。幸い、福田さんをはじめとする経営陣の皆さんが、連携よく情報を共有してくださっているので、たいへん心強く、助けられています。

エス・ピーパックを次の世代に引き継ぐためにできることへの思いを語る松尾さん

──現場の重要性というものを、お二方とも重視しているようにお見受けします。
 
松尾:
大事ですね。福田さんはその点を十分理解されていて、現場の声を吸い上げて株主や経営陣に共有する一方、経営陣が考えていることを現場にわかりやすく伝えようと動いてくださっています。
社員同士、また経営陣と社員とが理解を深め合いながら、皆が良いと思う会社の強みや文化を次の世代につないでいく。今はその過渡期にあるのかもしれません。

袋文化とサステナビリティそのものをビジネスに発展させる

──ショッパーやパッケージ、紙袋など、御社が扱っている商材は、サステナビリティへの取り組みが消費者の方にも見えやすいものだと思います。具体的にはどのような取り組みをされているのでしょうか?
 
福田:
当社では現在のところ、売上の4分の1程が環境に配慮した素材やインクを使用した商品です。さらに、100%リサイクル原料を使用した当社オリジナル素材「RETEXPETⓇ」や、石灰石を主原料とするプラスチック代替素材「LIMEX」などから作ったサステナブルな商品を提供することもできます。

エス・ピーパックが手掛けた商材。光るアイディアで勝負し、会社は成長を続けています

当社がこうした素材開発の段階まで踏み込んでいけるのは、ある意味で「ファブレス(工場を持たない)ならでは」なのです。我々はアイディアと企画力を売っている会社で、自社工場を持ちませんから、サステナブル素材が必要となれば、その分野に強みを持つ企業と協業することになります。
 
もちろん、パートナーとして選ぶからには、同じ価値観を共有できる企業であることが必要です。つまり、素材の開発や商品の製造にとどまらず、サステナビリティそのものをどのように進めていくのかを、お客さまと共に考えられるパートナーでありたいのです。また、得意先のお店のPRやブランド価値というショッパーがこれまで作ってきた付加価値に加え、サステナビリティの視点を加えた新しい袋文化を作っていきたいとも考えています。
 
──エス・ピーパックには、サステナビリティを担当する部署があると伺いました。それは、今後のそうした動きを見越してということでしょうか?
 
福田:
サステナビリティ推進室は、2023年3月に開設しました。営業でも仕入・企画でも、社員一人ひとりには日常業務がありますから、その片手間で循環までも含めたサステナビリティを考えるといっても、できることが限られます。ですから、会社としてバックアップするつもりで、専門部署を設けたのです。
 
松尾:
サステナビリティ推進室の設置により、会社全体にサステナブルな視点が広がり根付くことを期待しています。実際にサステナビリティ推進室の開設以降、社員の皆さん一人ひとりがアイディアを持ち、それを少しずつ形にしてお客さまに提案もできるようになってきました。それが、数字に結び付いているなと感じています。
 
福田:
この状況を、さらに推し進めていきたい。そして当社のお客さまが「サステナビリティへの貢献を具体的に進めたい」と考えたときに、すぐにお手伝いができるようになりたいのです。
 
松尾:
今や多くの企業にとって、サステナビリティは重要な経営テーマのひとつとして捉えられつつありますが、その実践となると、どこから手をつけたらよいかわからないという経営者も多いのではないでしょうか。
エス・ピーパックの主要顧客であるアパレル業界においても、サステナビリティをビジネスモデルにどう組み込んだらよいものか、苦慮されている先が多いように感じます。
 
福田:
そこをエス・ピーパックが打破したい。ひとつの手段としてパッケージを提案するだけではなく、得意先がサステナビリティを推進することに関わるストーリーや、全体像に至るまで提案していくことが必要です。
ひとつの例としては、サーキュラーエコノミーの構築にパッケージを絡めたストラクチャリングまでを、ビジネスとして提供できればと考えています。それができれば、当社のブランド価値をさらに高めることにもつながるはずですから。

会社と事業と人を、つなぎ続けること

──会社を存続させる、事業を継続することも、重要なサステナビリティだと思います。その点について、どのようにお考えでしょうか?

エス・ピーパックらしいアプローチでお客さまへサステナブルな提案を続けたいと話す2人

松尾:
会社が存続していくためには、しっかりと収益を稼ぎ続ける必要があります。しかしながら、目先の数字ばかりを追いかけていると、企画や開発など、中長期的な戦略をもって動く余裕がなくなってしまうのも事実です。エス・ピーパックの事業承継にあたり、稼ぎ続けるためにも、中長期的な戦略を自ら常に抱ける組織づくり・人づくりを行おうと福田さんと話しています。
 
定期的に開催される営業部門の全体会議においても、良い変化の兆しを感じます。以前はどちらかというと、個人や部門ごとの数字実績の報告に偏りがちだったのですが、福田さんの働きかけもあって、より戦略的な考えや成功体験を発表しあう場にしてみよう、ということになりました。その結果、個別の営業担当者から「この業界にこのような提案をしかけてみたい」など、さまざまな意見が出てくるようになりました。
こんな風に、社員の皆さんがもともと持っているアイディアや熱量をうまく引き出せればと考えています。
 
福田:
サステナビリティを組織化して進めていくアイディアは、実は前オーナー(現会長)の藤原さんが持っておられたのです。ただ、どのようなミッションを持たせるのかという具体化の部分に課題もあり、なかなか前に進まずにいたように感じています。
 
環境配慮製品の企画・販売強化に加えて、お客さまの状況や要望に合ったやり方をご提案するために、パートナーとの協業に積極的な当社として、お客さまとほかの企業との橋渡しを進めるための道筋も作られつつあります。それぞれの文化を持つ企業をつなぐ役割、それも当社にとって大切なミッションと考えています。
 
事業承継によって、企業だけでなく日本の袋文化をも未来につなぎ、さらに社員のアイディアや熱意をつなぎ合わせ、サステナビリティへの取り組みそのものを持続させ、ビジネスとして作り上げていく。
私たちの活動そのものが、まさにサステナビリティにあふれているといえるかもしれませんね。
 
松尾:
事業承継の本質は、単なるオーナーチェンジの域を超え、そこで働く社員の営みそのものを次の世代にしっかりと引き継いでいくことにあると思っています。社会人としての歩みを個人として振り返る中で、上司や先輩などから受けたさまざまな教えやアドバイスは、先の世代から自分へ託されたバトンなのだなと思うようになりました。このバトンはそのまたずっと先の世代から綿々と受け継がれて今、自分の目の前にあるものだと。この大切なバトンを次の世代へしっかりと託しつなげる責任が、今を生きる私たち現役世代に課せられているように感じます。託されたバトンを次の世代にどのように渡していくか、一人ひとりが自分ごととして意識し行動できるようになれば、事業承継を含むビジネス上の課題から地球温暖化といった環境問題まで、さまざまな社会課題が解決に向けて一歩動き出すのではないでしょうか。

【編集後記】
営業会議でのアイディア出しの仕方や提案書類の見せ方など、ちょっとしたきっかけを与えることで視野が広がり、会社全体がポジティブな雰囲気になったと話してくださったお二人。こうした会社の変化は、サステナブルな取り組みとして実現し、着実に軌道に乗り始めています。お客さま、そして社会に新しいサステナビリティな袋文化を広げるために、社員が主役のエス・ピーパックは前進を続けています。

執筆/植野徳生 撮影/橋本千尋

こちらの記事は、SBI新生銀行グループの新生事業承継・SBI新生銀行に関する記事です。

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